有り得んことだ。何故。何故私がこんなにも心乱されねばならんのだ。私の心に土足で不法進入しようなど愚の骨頂、今すぐにでも残滅してやりたい。筈、だ。筈なのだが。動かない。手が、足が、口が、指先が瞳孔が爪先が全てが。何故かあの女の顔をみた途端、あの女が私に締まりのない顔をみせた途端、言うことを聞かなくなる。由々しき事態だ。恐らくこれは病だそうに違いない。あの女、私に病を振り撒いたのだ腹立たしい!半兵衛様にこの病の治療法を仰いだのだが博識な半兵衛様の知識を持ってしてでもこの病を治すことは難しいとのことだ。私が自覚を持つことが先決だとか自分の気持ちを認めるべきだとか呟いて居られたのは一体何だったのか理解には及ばず曖昧な笑みを浮かべた半兵衛様の元を後にしたのは約数十分前。諸悪の根元である女が私の目の前に現れた。「三成くん」私の名を呼ぶ。動悸が激しい。ああ、ああ、目眩がする。一体この女は私にどんな病を撒いたというのか。腹立たしい!




(三成君、それは恋の病だよ。…聞いてないか)