BSR佐助 シリアス表現注意




冷たい指先が首筋に触れて、脊髄反射でびくりと肩が震えた。私を見るその瞳はどこか熱を孕んでいるのに、触れる指はどこまでも凍えるような冷たさで、そのギャップに私は背にぞわりとした悪寒が走るのを感じた。至近距離で、あと少し彼か私が身動ぎしたなら触れてしまいそうな唇にいつもなら甘く心臓が疼くのに。


「脆いよね」


――ちゃんは。いつも鼓膜に感じるものより幾らか低い声音で睦言のように囁かれた言葉に私はろくな反応を返せなかった。彼がく、っと軽く指先に力を込めたからだ。動脈を押さえられて頭の神経にぴきりとした痺れが駆け抜けて、喉の奥からひゅうと息とも声ともつかぬ空気が漏れた。――苦しくは、ない。息苦しいと感じる一歩手前でせきとめられたその圧力に、ああやはり彼は草の者なのだと思い知らされた。


「脆い。あと少し、俺様が力をこめたらきっと数分で死ぬよ。怖いだろ?俺様だったらいくらでも逃げれるけどさあ、たかだか農民は逃げられないっしょ?兎を絞め殺すよりも簡単だ」


饒舌なのに淡々とに呟く彼の瞳に燻る色は躊躇いと戸惑いと少しばかりの熱情。彼らしくないその色に、私も少しだけ戸惑った。普段の農作業でくたびれ泥の付着した野良着の袷に首筋から放れていった彼の手がかかる。流石に焦って抵抗しようとするも、彼のとった行動は私が想像していたような浅ましいものではなくて―――、まるで。まるで、幼子が母に縋るように開けた胸元に額を寄せるという、それだけだった。とくとくといつもより早めに鼓動しているであろう心臓の音を確かめるように。彼は、ただ、ただ静かにその音に耳を傾けていた。


「好きだよ」
「はい」
「大好き」
「知っています」
「死ぬなよ」
「死にませんよ」
「もし死ぬんなら、俺様に殺されて」
「…善処します」


不安ばかりが残る未来。戦火に巻き込まれていく私達の未来。
君を守れない俺が憎い。生きると言えない私が嫌い。
―――愛し合わせてくれない、この世界が、