BSR幸村
「もし、某が死に逝こうとも、そなたは生きていてくだされ」
残酷な言葉だと思う。 そんなまっすぐな瞳で告げられて、拒絶できる人間など居るのだろうか。 彼はいつでも純粋で実直で、それ故に残酷だ。 いつも私に否定を与えない。
「某の命は、お舘様の為にこそ在る物。戦場で死に逝くなら本望と心得て居りまする」
彼の一番はいつだって己の師で。 勿論、それに嫉妬するほど私も子供じゃないのだし、理解していてこその室入りだった。 初めて顔をあわせたとき、この人ならと思えた。 真っ赤な顔でおずおずとこちらに手を差し伸べた、その暖かな温もりがあればそれでいいと思えた。
「某は、…俺は、そなたを幸せにするとは誓えぬ」
それだけでいいと、思えたから。 彼が思う存分、心置きなく戦場へと赴けるように。帰ってきたとき、彼に家族の温もりを与えられるように。 私はそれだけを考えて、それだけを望もうと。
「俺の命在る限り、俺の全てはお舘様の御為に在る」
だから。
「…俺が死したとき、その後は、俺の全てはそなたのものだ。だから、俺が死に逝こうとも、そなたは生きていてくだされ」
残酷で、卑怯で。 けれどその温もりに、私は私のすべてをこの人に預けたいと思ってしまったのだ。
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