続けられた言葉に僕は何を返せばよかったんだろう。でもそれを言ってくれたっていうことは少なからず彼は僕に何かしらの言葉を求めていたんじゃないかって思う、思っていなくても、無意識のうちに。言葉が不自由だ、今の自分には彼に与えるべき言葉が見つからない、ぐるぐる、ぐるぐる。

「雷蔵」

 そんなことを僕の様子を察したのだろうか。兵助は別に何かを言ってもらいたかったわけじゃないよと苦く笑った。こんなときにまで人に気を使うんだ、そうゆう奴なんだ兵助って。だからきっと兵助が好きなんだよ、僕も、ハチも、三郎も、タカ丸さんも。

「聞いてほしかったんだ、ただ」
「うん、ごめんね」
「いや、ありがとう」

 タカ丸さんと終わりにしてきた。唐突にそう告げられた。理由は聞けなかった、だって少なくとも僕にはまだ兵助は相手のことを想っているように見えたから。それに驚きさえしたものの、なんとなくだけど、本当になんとなくだけど分かる気がしたんだ。ねぇ兵助、きっとタカ丸さんは、とても素敵な人だったんだね。僕たちが過ごすこの世界で僕たちが身を浸していくこの世界で今まで出会ったことのないような種類の、出会うはずのないような種類の素敵な人だったんだね。でもそう思うと同時にこみ上げたのはそんな人を手放して良かったのかということ。ねぇ、兵助まだ好きなら、きっと間に合う。そんな人とはもうこれから先出会うことはないんだよ、終わりになってしまうんだ、いいのかい、お前がそれでいいのならかまわないなんて、僕には言えやしないんだ。

「兵助」
「ん、」
「お前にとって、きっと一番最善な方法をとるんだよ?」

 お前の考えが、必ずしも最善であるとは限らないなんていったい僕は、何を伝えたかったんだろう。