金色のきらきらした髪が太陽の光を浴びて綺麗だ。ぼんやりと教室の中から外に視線をやれば嫌でも目に付くその色。

 こんな痛んだ髪より、兵助君の艶のある髪の方がずっとずっと綺麗だよ。春の香りが舞う中のあなたの言葉を思い出す。貴方はそう言うけれど、他の誰が何を思おうと。俺は何より綺麗だと思ったのは事実。

「……俺の、好きな色」

 思わず口に出てしまっていた言葉に、近くにいたハチがどうした?と小首を傾げるものだからごまかすように笑った。

「なんか珍しいもんでもあったのか?」

 否定する前にぐいと乗り出す身体。目に入る鮮やかな紫の軍団をみて変に気を使ったのであろう彼は、少し気まずそうに謝罪の言葉を口にする。正直な彼だ。態々そんなふうに言うものだからいいよと笑って返した。

「あ」

 と、はっちゃんが向けた視線の先には先程の金髪を追いかけるふわふわの薄紫。

「なんか最近さ、タカ丸さんと綾部ってよく一緒にいるよなぁ?別に組とか一緒なわけじゃないだろ」
「うん、タカ丸さんはは組で……確か綾部はい組のはずだよ、でも」
「ん?」

 言いかけて、口をつぐむ。自ら思い浮かべたその先の言葉。

 そういえば、彼は、綾部はずっと前からああだったのだと気づく。

「あ、追いついた」

 はっちゃんの言葉と同時に金色に触れる指先に振り返る相手は笑っていた。ゆっくりと動く口元の動きから読み取れる言葉が胸にちくりとささった。感情をあまり表に出さないと噂の彼はその表情をみて、薄っすらと目を細めている。

 嬉し、そうだ。

「はっちゃん、あのさ」
「おう」
「多分、俺、大丈夫だ」
「兵助?」

 思い返せば、いつもタカ丸さんのそばには彼がいたように思う。寄り添うように、ずっとずっとそこにいたのだろうか。きっと、そうだったのだろう。

(彼の瞳の真っ直ぐさに、怯む心に自嘲した)