先ほど買った小道具をぷらんと片手に揺らした。同行者の彼はあくまで付き添いだ。オレのほうが歩幅は広いはずなのに、どうしてか歩くのが早い彼の背中を追いかける。声をかければ振り返る。渇いた風が潤いを帯びるように靡く髪はきらきらとさざめいて、瞳が奪われる。

 思わず、火照る頬を抑えた。間抜けなオレをみたからか、何なのか。いつもは無表情に近い瞳が細くゆるりと笑んで。

「早く来ないと、おいていきますよ」

 言葉は突き放しても声だけは温かく、冷たい風は頬を冷やすのに、砂糖菓子を口にしたときのようにきゅぅんと溶けおちてしまうのだ。

 進む歩幅も速度も変わらない。凛としてまっすぐに進む彼の姿は綺麗。町の景色など異物のように排除してしまう瞳にばかだなぁと自嘲した。



(オレのほうが歩幅は広いはずなのに、どうしてか歩くのが早い彼の背中を追いかける。彼が歩くのが速いなんてそんなことはなかったのだ)

 彼を視界のすべてに映していたいと思う。綺麗な彼を焼き付けて、すべてを、少しでも多く。

 いつか、さみしくないように。ゆっくりとふみしめて、きみのうしろで。