幼かった君は、俺が伊作の分まで泣いてやってるんだなんていいながら涙を流していたね。今、そんなことを思い出したよなんて言えば、君はきっとバツが悪そうに眉間にしわを寄せるだろう。

「風邪、ひくぞ」

 座りながら足をぶらつかせて夜風にあたる僕をみて、襖に軽く寄り掛かりながら腕を組んでそう言った。

「留さんのくせに、随分男前になっちゃったよね」
「……くせには余計だっつの、……ほら」
「ん、」

 温かい羽織りを渡される。ありがとうなんて、言うことはできなくて、。少し大きめのそれにぎゅっと顔を埋めた。

「……留さんの匂いがする」
「気色悪いこと言うな」
「あったかい」
「……そうかよ」

 夜更かしも程々にしろよとそれだけ言った彼はそそくさと部屋に戻って行った。

「……留さんの、へたれ」

 君があまりにも優しいものだから、そう言いたくもなる。

(時々、勘違いしそうになるよって)