やはりお前の手は暖かいね。言えば何故だか不満げに眉を寄せる君。くすくすと笑えば瞼の向こうで更に表情を歪ませる彼の顔が浮かんで面白くなってしまった。

「手が温かいということは一般的に筋肉量の多さと血流の良さを表してるんだって前にも言っただろう?」

 それは良いことだ。なのになんでお前はそんな顔をするんだい。ねぇ、留三郎、留さん、留、君の手は、君の手は温かいね、僕は何度も繰り返す。君が飽きるほどに君の手を握る、骨ばった手、傷だらけの手、その度君は呆れたように眉間に皺を寄せるけれど、僕はそれでも彼の温かい手を握るのだ。

「伊作、お前の手はどうして、」

 彼は問うけれど、僕は目を細めるだけ。いってしまえば、きっと理由など存在しないのだ。君の手が温かい理由など、僕の手がそうでない理由など。それにもう理由なんて存在しない。そんなもの、きっと超越しているんだよ。だからお前がそんな顔をすることはないのに。言ってもお前はまた心配そうに瞳を細める。そんなお前の心配をよそに、僕は笑った。この新しい事実に、お前の手に温められるために僕の手が冷たいのだという法則をここに。