するりするりといろんなものを交わして、いらないものから捨て去ってここまできたのだ、だからこれからも、私は、私たちはそうして生きていくのだと思っていた。

 大丈夫だから、お前などいなくても大丈夫なんだ私は。

「滝なんか死んでしまえばいいのに」

 まったく酷いことを言うものだ。しかし私に口付けをする。そう言って口付けをする。私などいらないというような口付け。熱のない唇に、光が灯らない瞳。

「死んでしまえばいいのに」

 繰り返す、繰り返される、それでも同じに、矛盾する本能と理性に、歯止めなどきかなくて。

「滝がいるから、私は」

 繰り返せど、何が生まれるわけでもないはずだったのに。自分が分からなくなることが苛立ちに変わる。生まれる感情は、お前を欲するから、私だって、もう、何もいらないと、捨ててしまいたいと思うから。

 滝がいるから私はこんなに弱くなってしまった
(知ったことか、知ったことか。それならば私だって)

 お前が死んでくれればいいのにと思わなかった日などない。

 そうすればお前がいないと、ひとりでは生きてなどいけないなんていう甘えさえ、きっと消えてなくなると思うから。