僕は貴方のことを想っていた。それは認めてしまえば簡単で、嘘をつき隠せるような感情ではなかった。貴方がどう思っていたかは定かじゃない。確かに言えることがあるならばそれは貴方が僕を緩やかに拒絶していたこと、ただそれだけ。最後に取った貴方の手が、とても冷たかったことを、僕は今でも覚えている。手の大きさも、指の長さも、全部、全部。そうしてその温度を想いだすたびに霞むことのない胸のわだかまりは膨らみ質量を増すばかりだった。気持ちが大きくなっているわけじゃない、そうじゃなくて、感情の整理がつかないだけ、強がりなんかじゃないんだ本当に。だって僕は弱いってそんなこと、はじめから何も変わってはいないから。貴方が強いと言ってくれたこの心が支えてやっとひとりで歩いていけるようになったんですよ。

―――颯斗、好きだぞ
―――ええ、僕もです



心の中で毒づいたこの声は、まだ彼に届くだろうか

(からり、笑ったその表情を歪ませることが、まだ僕にもできるでしょうか)

 なんて無責任な言葉。

 押し倒して、息をするのを忘れる程にキスをして、めちゃくちゃに罵ったなら貴方は僕をみてくれるでしょうか。

title by ハコニワ。