意地悪く触れる指。頬が抓られる感覚に生理的な涙を浮かばせれば悪戯に笑う。

「…、」
「あっはは、変な顔」
「……お前なぁ、」

 向かい合わせの椅子に体育座りをして直獅の頬ってやらけーなんてふざけたことを言いながらにこにこと笑う相手の手をはらって冷めきった視線を向ける。

「直獅っていっつもここにいんのな」

 そんな弘樹の言葉に視線を本のページに落としながらも“一応”素っ気ない返事を返した。

「……まぁ」
「好きなんだ?」

 いい加減煩い。

「本、好きなんだ?」
「お前よりは」
「……」

 言葉が返らない。いや、その方がいいんだけど。流石に言い過ぎてしまっただろうかと思い顔を上げるときらきらとした表情の弘樹の顔が目の前にあって思わず後ずさってしまった。

「俺に勝ってるなんてその本のレベル高くね!?」

 制止。

 と、言った後、弘樹が思いっきり変な顔を作ったので遂に吹きだしてしまってそんなオレを見た弘樹は嬉しそうに目を細めて。

「なぁ直獅、」

 なんでオレが、なんで。そんなことをするくらいなら、どうして。

「俺と遊ぼうぜ」

 浮かぶ、脳に拒絶の言葉ばかりが羅列される。うまく言葉にすることができない。

「断るなよ、たまには、さ?」



知りたいという感情が身近な他人に芽生えた日

 導かれていく、温かい手に引かれていく。ほだされているなんて、そんなことはない。そんなこと、ないはずなのにうまく表情が作れないんだ。

「……直獅。困った顔、してる」

 そう言って太陽みたいに柔らかく笑うお前の表情のことを、少しだけ知りたいと思ってしまった。