梓くんは、本当に欲しいものを欲しいとは言わない。きっと彼のことを誰もが思い違っていた。欲しいものを簡単に掬うようにして手中に収めているように見えてしまう、みせかけているだけ、そうみえるだけ。

 私にも、誰にも、彼の真意は分からない。

 聞くことはしなかった。やっぱり誕生日くらい、サプライズのプレゼントをあげて、びっくりして溢れるような笑顔がみたくて、それなのに考えれば考える程あれもいいな、これもいいななんて悩んでしまって決まらない。そんな私を見兼ねたのかもしれない、優しい梓くんは言った。

「誕生日ですけど、先輩を下さい。先輩と一日一緒にいる権利を僕にくれませんか?」
「……え、でも、」
「だめですか?」

 言う梓くんを、ぎゅうっと抱きしめて、だめじゃないよって胸に顔を押しつけるようにして答えた。



好きって多分、嘘がつけなくなるってこと

(そうですよね、だめなわけないですよねなんて自信満々に、それでも子供みたいに無邪気な笑顔はきっと彼の本当なんだって思ってもいいのかなって思った)