「悪い狩屋、待たせた」
「遅い、遅いですよ霧野先輩」

 そう言って不満げに頬を膨らませてやるとそんなことをしてもかわいくないぞなんて言われてかわいくなくて結構ですかわいいのはあなたですからとまたいつもながらの会話が繰り返される。

「……ふん」
「拗ねるな、ほら」
「っ!」

 と、急に棒付きの飴を口に突っ込まれてキっと先輩を睨みあげるといたずらっこみたいに笑う。

「睨むなって、機嫌直せよ?」
「うるへー、まぁこれくれたから許してあげますよ」
「おう、ありがとな」

 くすくすと笑いながらこそっと呟かれた「単純でかわいいな」なんて言われて黙ってられる俺じゃない。

「っ先輩!!」
「あははっ、だってそうだろ?」
「〜〜もうほんとっ、だから嫌いなんですよ!ほんと嫌いですよっ、俺は!あんたが!!嫌いだ!!」
「はいはい」
「っ撫でるな!っもう帰る、帰りますっ」
「えっ、おい、待てよ狩屋っ」



もっと一緒に、もっと近くに、もっと、もっともっとって。そんな当たり前のことを聞いてくれるな

 ふざけたことばっかり言いやがる相手を置いて先に歩きだせば咄嗟に掴まれた腕、ぐいっと引かれて後ろに傾く身体を抱きとめられてしまう。罵声を浴びせようと振りむこうとするも、そのままぎゅうっと抱きしめられてしまって、顔が埋められた肩が吐く息で温もるのが分かった。

「……なぁ、もっと話していたいって思うのは俺だけじゃないだろ?」