見上げる視界に入り込んだ手は青く澄んだ空に向かってまっすぐ伸ばされる。ぐーぱー、ぐーぱー、とじたりひらいたり、とじたりひらいたり。何してるのって意味で隣を見れば、にこり笑いかけられる。分かってないけどまぁいっかって思って、僕も同じようにぐっぱって繰り返した。

「いい天気だね」
「そうだね、空が青いね」
「うん、青くて澄んでるね」

 サッカー日和だねって言ったら、そうだねってまた繰り返された。こんな天気が良い空の下で思いっきりサッカーできるなんて、なんて贅沢なんだろう。

「でも天馬君ならきっと、いつでもサッカー日和って言うのかな」

 くすくす、と笑う輝に、うん、きっとそうなんだろうなって思った。

「風が強く吹いてても」
「風が気持ちいねってね」

 向かい風も、追い風にして走る天馬を想像して、なんだかちょっぴり楽しくなった。

「雨の日でも」
「サッカーしようよ!」
「あはは!」

 僕もくすくすと笑う。

「そう言えば天馬君遅いね」
「剣城と狩屋、見つからないのかなあ」
「先に練習してようか?」
「天馬に狡いって言われるかもしれないけど、そうだね」
「ぐっぱーしてても仕方ないしね!」
「あれ、やっぱり意味なかったの?」
「いや、折角綺麗な空だから、掴んで大切にしまっておけたらって思ったんだけど無理でした」
「あははっなにそれ、輝へんだよ!」

 起き上がってお尻についた砂をぱしぱし払う輝、僕はって言えば最初から立ってたからそんなことをする必要はなくて、ボールを掴んで駆けだそうとすれば、遠くの方から三人が駆けてくるのが分かって、大きな声をあげる。

「遅いよ!早くしないと、青空が逃げちゃうよ!」

 後ろの方で、小さくだけど輝の笑い声が聞こえた。