おっきな海みたいな人。 時には激しく吹き荒れて、時には穏やかに優しくて、きっとそんな彼に俺はずっと。 (恋をしていた) 「おーい!立向居!」 左右に大きく手を振るそのさまはまるで昔と変わらくて思わず笑みがこぼれた。 「お久しぶりです!綱海さん」 「おー、こないだの韓国以来だっけか?」 俺は福岡。彼は沖縄。所属するチームは違うもののふたり国内でプレイしている、そして嬉しいことにふたりとも日本代表に選ばれているためそういった試合で度々会うことが出来た。 「俺が恋しかったか」 からかうように笑った綱海さんがかっこよくて、かっこよくて。 「立向居、顔赤い。冗談だっての」 「いえ、その」 「ん?」 「えっ、わっ」 覗きこむ顔にわぁと大げさに声を上げて後ろに倒れこみそうになる腕を引かれた。 「っと、あっぶねー!」 「わ、あ、すいません!」 「いいってことよ、気をつけな」 腕は掴まれたままだった。言った綱海さんはそのまま沈黙して俺を見つめて何かを考え込むように目を上に反らしたあとまた俺に向き直る。と、閃いたと目をきらめかせるとそのまま俺の腕をひっぱった。 「っ、?」 「よーしよし、久しぶりに会って緊張してんだよな?こうしたら落ちつくだろ」 腕の中にすっぽりとおさまってしまった俺の背中をぽんぽんと叩く。なんだこの状況……って心臓がもの凄い勢いで脈打っていくのが分かって、顔も熱くて。 「落ちついたか……って、おまえ」 「つな、つなみさん……」 「え、は、なんちゅー顔して」 真っ赤な顔で顔を上げた俺をみた綱海さんが心底驚いたと目を丸くした。 「……っ」 「……、あーいや。これは俺が悪い、悪かった」 「…え、」 抱きしめていた身体を離されて、瞼を手で覆う綱海さんが焦った表情でうーとかあーとか唸っている。いまいち状況がつかめなくて、でもどきどきも収まらなくてどうしようもなくそのまま俯いた。 「あのさー立向居」 「……?」 「いや、俺さ、お前が照れてるって分かってたんだけど、ほら、つい」 君以外の誰かじゃ駄目で、他の何でも埋められなくて、そんな風に思うほど、甘い深みに沈んでく たくさんの時が過ぎてたくさんの人と出会って、たくさんの想いを胸にした。けれどもそれでも例えあの頃のように毎日顔を合わせることのできない今だって、俺は。 「……綱海さんっ!」 「お、おう」 いきなりの大声にたじろぐ相手に苦笑。 すごくすごく、会いたかったですよと貴方に感化された真っ直ぐな笑顔で言えば、本当に嬉しそうに幸せそうに大きく高らかに笑う貴方にやっぱり俺は敵いそうにないのです。 title by ニルバーナ |