「狩屋」
「あ」
「疲れないか?」
「すげぇ疲れる」

 何がって、猫かぶんの。疲れるんならやめればいいじゃないかと問えば貴方の前ではやめてますと返される。答えになってない。

「猫」
「は?」
「猫被るというより、」

 本当に猫みたいだよな。と、机につっぷしてた相手の髪を指に絡める、と。

「がうう」
「いって」
「これでも猫なんて言いますか、俺は猛獣です」

 いや、猫だろ。これは猫だろう。吹きだしそうになるのを抑えながら俯いて態勢を立て直す。ここで笑ったら負けだ。笑ったらこの猫はぎゃーぎゃー騒いで俺に爪を立てるに決まっている。

「狩屋、もう一回」
「何をですか」
「がうぅって」
「……はぁ?」
「だからがうってしろって」
「Mですか」
「違うけど、ほら」

 早くと目の前に手を差し出せばうろたえる狩屋がなんだかかわいく思えてまた笑いそうになるのを抑えた。そしてやっと俺が引く気はないのだと理解したのだろう、噛みつこうとしぶしぶ開かれた口に指をぐいっとつっこんだ。

「あがっ」

 目を見開いた狩屋。俺はすぐに指を引き抜いたけれど顔を青くした彼の口は開ききったままで。



自分の前でしか見せない彼の素顔がかわいくて仕方がないもので、つい

「ぶっ、あはは、狩屋っ、お前すごい間抜け面だぞっ」

 もう耐えられない。

「意味、わかんねぇ……まじ」

 唖然とする狩屋の前で、暫く笑いを堪えることができなかった。

「ははっ、かりっ、狩屋かわいいっ」
「あああああもう!死ね!まじ死ね!!」