ひとりはいやだと震える吹雪に、サッカーが怖いと怯える吹雪に、俺は何も出来なかったんだと思う。彼を1番に信じたのは円堂で彼を引き戻したのは豪炎寺だった。それでも俺だって吹雪を信じていた、吹雪の気持ちだって誰より分かりたいと思っていたし、何より辛そうな吹雪をどうしたら元気づけることができるんだろうと気付くとそんなことばかり考えていた。サッカーを出来ない気持ちも、したいのに怖いと思ってしまう気持ちも、知ってたから、痛いほど味わったものだったから。疾風の如く、突き抜けるようにフィールドを貫け、そのしなやかな体つきからは想像もできないほどの凄まじいシュート。吹雪にパスを出すことが、気持ちが良かった。俺にボールを集めなと地震満々に言い放つ吹雪に、俺がカットしたボールを前へと。そしてゴールを決めた吹雪は、お前のパスは俺をさらに早くしてくれると、笑った。今思えばあの時から既に。でも、全てを知った今思えば、俺はもしかして。柄にもなく、そんな不安が過ぎった。違うんだ、大丈夫、だって同じように、吹雪からもらうパスは、俺を前へと導いてくれたんだから。みんなが求めているのは自分の中のアツヤだと苦しむ吹雪に、それが伝えられたらよかったのに。誰よりも早く、俺だけの言葉で、ただ真っすぐに伝えられたら良かったのに。ひとりは嫌だと震える吹雪に、全部含めて、君が好きなんだと言えたのは、すべてが終わった後だった。ありがとうと言ってくれた。そんな俺に、みんなにするみたいな、はじめて出会った頃、風になろうと言ったあの笑顔で。僕も一之瀬くんが好きだよと言ってくれた。笑ってくれた。

「吹雪」
「うん?なに?」
「みんな吹雪を必要としてた、全部含めた吹雪が吹雪だからってみんな吹雪が大切だって」
「……うん、凄く嬉しかった」
「でもな、」



この強さは君を未来に導くために持って生まれたものなんだって言ったら君は笑ってくれるだろうか

 俺が1番、吹雪を助けたいって思ってたんだって。その言葉に吹雪は今までみたこともないくらい優しい表情をした。知っているよとだけ呟いて、揺るがない笑顔でたっている、吹雪がいた。ああ、やられた。なんだか力が抜けてしまって、俺はその場にしゃがみこんで、片手で目を覆った。

「あはは、なん、だ……」
「……?」
「馬鹿みたいだ。吹雪、あのさ」
「うん?」
「俺、吹雪が好きなんだ」