空が泣いてた。しとしとと降り注ぐたくさんの雫が町を濡らしてく姿を窓から見つめる。予定してた天体観測は中止だって、仕方ないから電話の子機を部屋にもってきてふたりに連絡することにした。柑子の方に連絡してから拓矢にも電話を入れようとボタンを押す。そして数コール後。

「あ、拓矢」
「……俺じゃないです」
「いや拓矢だろ」
「ん。で、中止って連絡だろ?分かるっての」
「まぁ一応だよ」
「わざわざどうもー」
「おう」
「……それだけ?」
「……なー拓矢」
「んー?」
「願い事、届かないかな」
「短冊に書いたやつ?」
「ん」
「そうゆうのは関係ないんじゃね?」
「おーそっかそっか」
「何お前、欲に忠実すぎるだろ」
「だって叶わなかったらやだし」
「織姫と彦星がかわいそうくらい言えないのかよ」
「女の子じゃあるまいし」

 ベッドの上に寝転びながら他愛のない会話を交わした。窓から外をみても、こと座のベガも、わし座のアルタイルも見えるはずはなくて冷たい雨ばかりが落ちていって。なぁ、本当に楽しみにしてたのは俺じゃなくて、きっとお前だったはずなんだよ。嬉しそうに俺に七夕伝説の話をする拓矢の声に、暫く耳を傾けてた。

 なんてことないって、興味ないって顔するのが得意なやつだった。実際、そう思っていたんだと思うけどそれはこいつが自分の気持ちに疎いだけなんだ。なぁ、拓矢。もしかしたらお前が寂しいと思う前にすべてが取り返しのつかないことになってしまう、そんな時がくるかもしれない。そんなの、いやなんだ、だからそんなことにならないように俺が。






 学校の教室に飾った短冊。見せろよっていってもやだって隠されてしまったお前の書いた願いをこっそり見届けに行こうかななんてちょっと、本気で思った。