はじめてのそれは、天体観測なんて言えるほどたいしたものじゃなくて、ただキラキラ光る星みたいに目を輝かせて空を見上げてた。隣には当たり前に穏やかに笑う両親がいて、幸せだったなって思う。夜空を見上げる度、女々しいかもしれないけど、思い出すんだよ、今はいない、あの人のこと。だから俺はいつも空を見上げてて、そんな俺の気持ちを知ってか、母親は帰りの遅い俺にも何も言わなかったし、柑子は門限を伸ばしてまで俺に付き合ってくれるようになった。

「拓矢って、ろまんちすと?」
「は?なんで?」
「だって星みるのが好きとかさ」
「じゃーそれでいいや」
「わー投げやり!」
「そんなことありませんよ」

 サッカークラブの後の恒例の天体観測。柑子は俺たちの練習が終わってからの合流。俺と謙ちゃんの会話を柑子は見守る様にみて微笑む。きっと柑子が、このことに関して謙ちゃんに何かを言うことはないんだろう。別にロマンチストだと思われたって構わないし、本当のことを言ったって良かったけれど。

「あ!みろよふたりとも!」

 東の空高くを指さしで嬉しそうにはしゃぐ。明るい三つの星が作る直角三角形を見て謙ちゃんがそれを指で繋いだ。

 夏の星座を繋ぐ指先に吸い込まれそうになってはっと我に返る。いつからか、哀しみの置き場にしていたのはその痛みも、大切に大切にあたためていたかったからなのかもしれないけど、でも俺。新しく光る意味を見つけたんだよ。







 だって大切な人と見上げる星って、多分。そんな哀しい気持ちでみるもんじゃないって、お前と出会ってから思うようになったんだよ。