大きな身体に覆い被さられてまるで何かに包まれているような錯覚に陥る。かくんと肩に預けられた顎。もごもごと動く口の中にはまたなにかしらのお菓子が入っているんだろう。読んでいた雑誌に目を移す前にアツシの髪をそっと撫でてやる。

「ん、」

 す、口を開いた。声はそれ以上なくて振り向くと同時に合わされる唇。ちゅ、と軽いリップ音が鳴って、すぐに離される。

「室ちんの唇、やっぱり甘くないんだねー」

 突然の行為と平然と言い放たれた言葉に目を瞬せたのち、苦笑した。

「それは悪かったな」

 決して嫌味にならないように穏やかに、さらりと流れる彼の髪を撫でながら呟いた。

「今度は飴でも舐めておこう」

 読んでいた雑誌をぱたりと閉じて、それから瞼もゆっくりと綴じながら包まれる彼の腕にそっと手をそえた。





 俺の言葉に小さくうなづいた「
うん」という言葉が、少しだけ照れ臭そうで、ちょっとだけ笑ってしまった。