何も言わずに隣に寝そべった彼。低くなった視界から見上げる空、きっと落ちる木漏れ日を指したのだろう。眩しいな。そう一言だけ言って、それでもその光を拒むこともせず瞼を薄く開いていた。

 覗きこむように覆いかぶさる。影の落ちた視界に、開く瞼。泣きそうになったのは何故だろうか。彼と光を遮る自分の背中は滲む太陽を受けて温かい。

「……んだよ、テツ」

 なんでもないです、とそれだけの言葉が出てこない。たったそれだけの言葉を紡ぐのに、声が出なくて、唾を飲み込む。喉が鳴るのが分かったのだろう、彼の手が伸びて、身じろぐ前に掴まれた首筋が、硬直したように動かない。


「なぁ」

 眩しいな、と。
 ねえ青峰くん、それは間違いだ。

「まだ」

 足りねえ、と。
 何がと返すにも、声になってくれない。

「遠い」

 泣きそうになるのは、君のせいだ。言葉が不自由なのはお互いさまで、回りくどいくせにやけに真っ直ぐな君の言葉は、ボクの心を握りしめて離さないから、ぎゅっと締めつけられるように苦しいんだ。

「青峰君」

 言葉を、ください。

 言えば、フ、と息を吐いた彼の口が開く。首は掴まれたままだ。物理的な苦しさじゃない、君のせいとしか言いようがないのに、彼はそんなボクを知ってか知らずか。

 いともたやすく。

「……お前が遠いせいだっつってんだよ」

 ぐい、と引き寄せられた。日光を隠しきれないお前の背からあぶれた光が眩しくて眠れやしねえと彼は言った。抜け出そうとする微かな抵抗も照れてんのか馬鹿だなんてそれは君のほうでしょうと言えば減らず口だと笑われた。

 からから。
 温かい、温かくて。





 眩しいのは君のほうですと言えば、そんなのは当たり前だとまた笑われた。