美しき日々。<3>
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長押優太、15才。趣味は音楽観賞・演奏、特技も同上。性格は穏やかで安定している。顔が広い。現在留学中の年の離れた兄(?)がいる。他特筆すべきこと、俺、高梨修也の幼馴染み。
それが、たった今人あたりのよい笑顔をこちらに向ける男の詳細である。まったく人畜無害を絵にかいたようなやつだ。最近はこいつから度々謎の裏切りを受けているが、そういうところもあるやつなんだよなあこいつは、ということでひとまず気にしないでいる。少なくとも、教室の廊下側の窓を執拗に開け閉めして存在をアピールしてくるヤツよりはずっと安心できるのは確かだ。
俺たちが初めて出会ったのはいつになるだろうか。なんせ家が隣同士だから、本当に小さい頃から兄弟ぐるみ家族ぐるみでの付き合いがある。だから、まあ、たまたま同じタイミングで家をでて、玄関前でパッタリ顔を合わすなんてこともよくある話なのである。今がまさしくそうだ。
「やあ、シュウ。おはよう」
「おー、おはよう」
何度繰り返したかわからないやり取りを今日もまた繰り返しながら、ユータはちょこちょこと俺のそばに駆け寄ってきた。今日も今日とて登校時間を共にする。これも何年やってんのかな。扉を開けた拍子にずり落ちた鞄を再び担ぎなおして、俺たちは通学路を歩み始めた。
「ついに仮入部今日からだね。どうしよう、もうドキドキしてきた。先輩どんな人かな? 同級生は他に何人くらい入るんだろう? うわー楽しみ」
それはまさしく新入生にありがちな悩みだ。そういや中学の時もこんな風に浮き足立ってたな。中学には軽音部が無かったから、また違う部活での話だが。こういったことを楽しみ、で締めくくれるのはこいつらしいなと思う。それとも、実際はこんなもんなのか。わからん。
「気の早い奴だな。…ま、軽音はそれなりに入るんじゃないか? 部員数結構多いらしいし、そんだけいれば先輩も誰かしらとは気が合うだろ」
ていうか、お前なら全員とうまくやりそうだと思うけどな、言わない。
そういえばとこれまたありきたりな世間話を交わし、話題は最近ユータ界で大流行り(笑)の某アホの子の件に移り、他、だらだらと会話しながら学校にたどり着く。
ここまでの道のりでもそうだったが、ユータは度々知り合いに声をかけられた。俺の知ってる同じ中学のやつから、いつの間に知り合ったんだというようなやつまで。顔が広いというか、もはやコミュ力お化けの域である。こわい。
しかし、コイツに声をかける奴らを見ていると、この幼馴染の本当にすごいところはただ顔が広いというところだけではないんだなと感じる。なんというか、どいつもこいつもいいやつそうなんだよな。そういうやつを集める才能があるのか、ユータの雰囲気が周囲の人間をそのようにさせるのか。俺もそのいいやつ予備軍に含まれたりしねぇかな、そうだったらいいのになーなどと考え始めている自分は、やはりユータの魔力に呑まれつつあるのかもしれない。こわい。
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