序章
春、満開の桜に迎えられて
俺はここ、城前高校に入学した。
都会のど真ん中の、少しせせこましい新たな学舎。高揚を抑えられないまま門を潜ると、中庭に辿り着く。
ここで合格発表があって、俺がこの学校で過ごすことが決まったんだよなぁ…なんとも言えない感覚だ。そのまま式場へと向かった。
入学式。
そわそわしているどいつもこいつも大人しそうな顔つきをしている。
君達は今日から大学受験生です、なんて教頭の言葉に戦慄しながらもなんとかこの進学校に身を滑り込ませられた喜びを噛み締めた。
俺がこれから3年間を過ごすこの城前高校は県内有数の進学校。
そんな高いハードルを越えることができたのは、単に平穏な高校生活を謳歌したかったからだ。
進学校なら不良もいないし、道理のわかる奴が集まってくるだろうなんて、安直な考えだが、間違っちゃいないはずだ。周りの生徒は俺の願いを叶えてくれそうなやつばかりだった。
ここからだ。
ここから、俺の平穏な高校生活が始まるんだ
…そう思っていた時期が、俺にもありました。
親友が腹を抱えて笑う。
その傍らの女生徒も同上、薄情なやつらだ。
結論から言うと、俺の願いは叶わなかった。
というのは…
「ウオオォォオオオ!!」
廊下からの雄叫びと足音、しかも近づいて来ている。
俺はため息をついた。どうしてこうなった?
雄叫びの主は俺達の教室の前で歩みを止め、扉を開き、教室内に踏み込んで、そしてー
「ッ!?ひぎゃぁあああ!!」
プリントを踏み足を滑らせ地に伏した。
先ほどまで腹を抱えていた親友、長押優太(なげしゆうた)は過呼吸にでもなるんじゃないかってくらいに大笑いして、傍らの女生徒宇都宮妃芽(うつのみやひめ)もやはりニコニコしている。
そしてこの変人、俺の願いを妨げる張本人である女生徒、吉野茜(よしのあかね)は…
「誰このトラップしかけたの!?」
起き上がって喚きだす。
ああ、うるせぇ、うるせぇな。
俺、高梨修也(たかなししゅうや)は二度目のため息をついた。
新たな学舎は、変人の巣窟でした
俺と変人達の
騒がしい毎日が始まった。
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