変人江口平助はこう言った



「なあ高梨、俺は思うんだよ」


 それはある日の放課後
 他に誰もいない教室でのクラスメイト、江口平助の呟きから始まる


「俺はな、常々思うんだよ。究極の美についての話さ。
君は女子のスカートを見てどう思う?

…いや、単刀直入に聞こう。
君は女子のスカート丈はどれくらいが至高だと思う?

ああ、すまない。
いきなり聞かれても答えられないな。
それなら俺から話そう。


俺は常々女子のスカート丈は長くて然るべきだと考えている。
その所以は単に足が見えないことにある。

世の人々は生足がエロいという。
俺もそう思う。


だがな…、考えてもみてくれ。

もし目の前に全裸の美少女がなんの恥ずかしげもなくただずんでいたら、どうだ?

確かに俺は興奮するだろう。
だが同時にこうも思う。
ああ、なんて勿体無いことを…、ってな。


そもそもの話、パンチラや絶対領域がエロいのは何故だ?
そのものがエロいのか?

いいや違うね。

まずそれらは人目に触れるものではなく、スカートやニーソに隠される物なんだ。
それが俺達の前に現れた時、真のエロスが導きだされる。


そう、丸出しに価値はないんだ!

本来見えないはずの美しいものが、ふとした拍子に俺たちの前に姿を表す。
そうして俺たちの心をさらっていくのさ!!

なんと美しく、幸福に満ちた瞬間であることか。
この世のすべての花々その蕾が、一斉に芽吹き春を迎えるような暖かい感情を、俺達に運んでくれる…。


ああ、そうさ、丸出しに価値はない。
いや正確には、丸出しとなった瞬間にその価値は失われてしまうんだ。


それなのに!!

嘆かわしい!
なんて嘆かわしいことだろう!!

世の女の子たちは何故、かくもはしたなくスカート丈を縮め、足を出し、自らその美しさを捨ててしまえるのか。

そしてそれを美しいとさえ思っているのか!!


確かに生足はエロい。
だが真の究極の美はそうじゃないだろ!?

なあ高梨、お前はどう思う?

この歪んだ風潮。
なんでも見せておけばいいなどという甘えにも似たこの世の傾向を。

聞かせてくれ高梨。
お前はどう思うんだ?

究極の美、そして…究極の、エロス!!

なあ、どう思う高梨!?…高梨ィッ!!」




「おう、知るか」



それはある日の放課後

高梨修也の一生のうちで最も生産性のない時間のひとつであった







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