主力部隊との邂逅

※時間軸は過去編です。
___________

「ナマエ。すまねぇがハンジに用があると伝えてきてくれ。急ぎの用ではないが、今日中に来るように、とな。俺は生憎今手が離せねぇ...」

「もちろん!」

リヴァイは書類に目を通して何かを書いたり色々ととても忙しそうだ。
でもわたしは特にすることもなくて、掃除も終わらせてしまったしリヴァイから借りた本を読んでいただけだったのでお仕事をもらえるのはありがたい。

読みかけの本にしおりをはさんでパタンと閉じる。その本を手に持ち、本棚へと元あった場所へと戻す。

「それじゃあ、行ってくるね」

「あぁ。悪いな」

「ううん!リヴァイはお仕事大変そうだし、わたしにできることがあるなら言ってね!」

「...クソメガネの長話には付き合うんじゃねぇぞ」

「気をつける!」

そう言って部屋から出てハンジを探しながら廊下を歩く。けれど見つからず、ハンジの部屋にならいるだろうと思い部屋を訪ねた。

ノックをして出てきたのはハンジではなくモブリット。

「モブリット、ハンジって今どこにいるかな?」

「ナマエちゃん、わざわざ訪ねて来てくれたのにごめんな。分隊長ならつい先程呼び出しがあって部屋を出ていったんだけど...。

行き違ってしまったかな」

悪いね、とモブリットは申し訳なさそうにそう教えてくれた。もしかするとモブリットが言ったようにハンジを探して色んなところを歩いているうちに行き違ってしまったのかもしれない。

「モブリット、ありがとう!もう一度通ってきたところにハンジがいないか探してみるね!」

そう言ってモブリットに別れを告げて、さっき通ってきたところをもう一度歩きながらハンジを探す。

するとモブリットが言ったように行き違っていたらしいハンジがそこにはいた。そしてハンジは誰かと話しているようだ。

とても大きな人と、もう一人はハンジと身長はあまり変わらない人。

楽しそうにお話していて、それを邪魔するのは少し気が引けたけれどリヴァイに頼まれたことを伝えるくらいなら大丈夫だろうと思いハンジに近づいた。

「ハンジ!!」

ハンジの名前を呼ぶと、こちらにハンジが振り向く。そして一緒にハンジと話していた2人の目線はわたしへと向けられた。

「おや、ナマエちゃん!どうしたんだい?」

小走りでハンジへと近づいた。

「リヴァイがね、急ぎの用じゃないけど今日中に伝えたいことがあるから時間がある時に来てくれ、って!」

「リヴァイが?

わかったよ。わざわざありがとう、ナマエちゃん」

「ううん!」

伝えたいことは伝えられたので戻ろうと思った時、ハンジと同じくらいの大きさの人がこちらを見て微笑んだ。

「もしかして、君が噂の小さな希望と言われている子かな?
本当に小さいんだな。

私はナナバだ、よろしく。君のことは噂程度には聞いているよ。ナマエ、って呼んでもいいかな?」

ナナバ、と名乗った人はとても綺麗で男の人のような、でも女の人のような変わった雰囲気を持っている人だと思った。

「うん!よろしくね、ナナバ」

ゆるく微笑んだナナバにわたしも笑顔で返す。その時わたしの後ろでスンスン、とにおいを嗅ぐような音がした。

「えっ...と...?」

ハンジやナナバと話していた、とても大きな男の人がわたしのにおいを嗅いでいる。その行為にわたしは驚きを隠せない。

どれだけ驚いていたのか自分では表情がわからなかったけれど、相当すごい顔をしていたらしい。そんなわたしの様子を見てハンジもナナバも吹き出した。

「ごめんね、ナマエちゃん。びっくりしただろう?

彼はミケ。これでも分隊長で、私と同じ立場なんだよ。そしてこれは彼の癖。新兵の匂いを嗅いでは鼻で笑う癖が.......、おや...?」

「ミケ。どうしたんだ?いつものように鼻で笑うまでの流れは今回無いのか?」

いつもは鼻で笑う癖?があるらしいけれど、わたしのにおいを嗅いだあと、鼻で笑われることはなかった。

...わたし...変なにおいするのかな...。毎日シャワー入ってるけどなあ...。

何も言われていないけれど少ししゅんとしてしまう。

しゅんとしていると、ミケはようやく口を開いた。

「この子は...何者だ?

この子の匂いは変わっている。周りとは違う匂いがする。何か周りとは違う特別な何かを持っている、ということか?」

「わ...わたし、変なにおいする?」

「いや.....違う。花のような匂いだ。

お前からは花のような匂いがする」

「ええっ!本当かい!?

どれどれ.....。

うん!花の匂いはわからないが、ナマエちゃんからはいつもいい匂いがするよ!今日も可愛い!!」

ハンジはそう言ってわたしをぎゅむ、と抱きしめる。ハンジに苦しい、と伝えると笑いながらさらにきつく抱きしめられた。そんな中、ミケはこちらを見て話しかけてくる。

「驚かせてすまないな。

お前が、エルヴィンが探していたナマエか。一見すればただの子供のようにしか見えないが...匂いを嗅いでわかった。お前は確かに周りとは違う。特別だ。

きっと人類の希望となるだろう。よろしく頼む」

ミケの言葉にわたしの顔は綻んだ。

「うん!ミケ、よろしくね!」

「いやぁ、それにしても今この場にリヴァイがいなくて本当に良かったよ。

リヴァイは過保護だからね。ミケのさっきの行動をリヴァイの前でしていたらどうなっていたか...」

「ハハ、リヴァイのお気に入り、っていう噂は本当みたいだ」

「リヴァイだけじゃないさ。エルヴィンだってナマエちゃんのことはすごく可愛がっているんだ。かく言う私もナマエちゃんのことは可愛くて仕方がないよ...!」

そしてまたハンジの抱きしめる攻撃が始まってしまい、ぐぇ、と声を出した。しかしすぐにハンジに抱きしめられた体は楽になる。

「.....?」

わたしの体はミケに持ち上げられていた。両脇にミケの手。まるで人形のようにわたしはミケに持ち上げられていた。

「あぁッ!ミケ!!私のナマエちゃんを!!!」

「.....軽いな。こんな小さく、細い体で本当に兵士が務まるのか?これから始まる訓練は楽なものでは無いぞ」

「確かにね。

しかもリヴァイが面倒を見るんだろう?ナマエにはきついんじゃないか?」

ミケはわたしをゆっくりと降ろしながらそう言った。その意見にナナバも同じことを思ったみたいで。

「だいじょうぶだよ。

わたし、どんなに辛くても逃げないって決めてるから!これはね、わたしが決めたことなの。

だから、だいじょうぶ!」

「そうか。ナマエは強いんだな」

ナナバは微笑みながらわたしの頭を優しく撫でる。

「訓練なら、俺も時間がある時は見てやろう」

「本当!?ありがとう、ミケ!!」

「おっと、そろそろリヴァイの所に行かなくてはね。ナマエちゃんもそろそろ戻るだろう?あまり遅いとリヴァイが心配するよ」

「うん!!

それじゃあ、またね!ミケ!ナナバ!」

「あぁ。またね、ナマエ」

「訓練、気を抜くなよ」

****

「調査兵団の小さな希望、あの子は本当に希望になれそうか?」

「ああ。今はまだ未熟だが、確実に我々の希望になるだろう。

ナマエからは...懐かしいような花の香りがした。そしてそれに混じってリヴァイと似たような香りもな」

「それはリヴァイと一緒にいるからってことか?」

「いや.....違うな...。リヴァイと同じような何かを持っているのかもしれん」

「まぁ、私にはミケの感じた匂いはわからないからね。ともあれ、あんなに可愛らしい子だとは思わなかったよ。

ミケも少し、可愛いと思っただろう」

「.....さあな」

「ハハ、素直じゃないな、全く」

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