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「.....う...っ...」

体を襲う鈍い痛みで目が覚める。目が...覚め...た...?わたしは今どこに.....?

急に目に光が入り込んだためか、目を上手く開けない。けれど、その光に徐々に慣れた時、わたしの目線の先、少し遠くには拘束されたエレンと、対照的に何もされていないヒストリアがいた。

「エレン!!ヒストリア.....いっ...!?」

動こうと思った時、後頭部がグッと引かれた。

「オイオイ、落ち着けよ嬢ちゃん。大切な仲間を心配するのはご最もだが、自分の身を案じた方がいい」

「.....!お前...は.....!!」

わたしにそう声をかけた人物、それはリヴァイを襲ったケニーだ。

そしてわたしは襲ってくる敵を倒していた途中、突然ケニーが現れ、圧倒的な力の差で負けた。後頭部を思いきり殴られ、気を失った。その瞬間、視界の端に赤いリボンが舞ったのが見えたのだ。

.....!リボン...!

バッと手元に目線を移すと、固く握られた手のひらには赤いリボンが握られていた。きっと気を失いながらも必死で握りしめたのだろう。

リボンがあったことに安心するも、なぜわたしを狙った真意がわからない。そしてなぜわたしは拘束されていないのか。

「あんたを捕まえるのに何人殺されたか。まったく...とんだ化け物だな。いや...あんたの一族はこれを望んでたってわけか。

まぁいい...、リヴァイもあんたもやたらお互い執着してるようだったが...。あのリヴァイが誰かに固執するなんて笑わせてくれるよなぁ...?」

「...うる...さい...!」

「オイオイ、そんな怖い顔すんなよぉ!血縁関係でもねぇのに、リヴァイとそっくりな表情しやがって、まったくせっかくの可愛い顔が台無しだぜ?

あぁそうだ。逃げようったって無駄だぜ、立体機動装置のガスは抜かせてもらった」

「.......何が...目的...人質のつもりなら、わたしを選んだのは間違い」

そう睨みながら言うと、ケニーは嫌な笑みを浮かべた。

「端から人質のつもりなら、こんな何も拘束しないわけねぇだろ?

悪いが嬢ちゃん...。あんたにはここで死んでもらう」

「は.........?」

死ぬ?わたしが?どうして?

「何も知らねぇって顔をしてるな。それもそうだ。あんたは実際何も悪くない。

そうだな...。あのやり取りを見てるのも面白ぇが、折角だ。死んじまう前に嬢ちゃんの一族のことを教えてやるよ。

嬢ちゃんの一族が、かつて何て呼ばれていたか知ってるか?」

「.......」

「天使すら堕とした一族だ。嬢ちゃんのその足元には数え切れねぇほどの死体が埋まってんだよ。

実験が失敗したせいで苦しみながら死んだ人間や、副作用で命を落とした人間、実験に利用するために殺された人間、数え切れねぇ」

「わたしの.......?」

「あぁそうだ。そもそも何でそんな実験を始めたのか、巨人と戦うためじゃねぇ。人間同士の戦いのために、人を殺すための道具を作るために最初は実験をしていたんだぜ?恐ろしいよな。

途中、巨人が現れたことでその目的が変わっただけで、根本的なものは変化していない。殺戮するための道具を作ろうとしていたってことだ」

わたしを作るために、何人もの人が殺されて実験台にさせられて。そもそもわたしは...人を殺すための道具?

「嬢ちゃんのその可愛らしい見た目も、性格も、人間を油断させるために遺伝子に組み込まれた性質だ。

その見た目に反して、戦いが始まれば残酷非道で容赦ない。やけに冷静に人を殺せる、そうじゃねぇのか?」

そう問われ、言葉が出なくなる。わからない。自分がわからなくなる。戦いの時はいつも冷静だ。それは、わたしが戦いに慣れているから、そう思っていた。けれど...今までの思考回路もすべて、遺伝子によって操作されていたのだとしたら?

「仲間だと認識した人間に対しては自分の身を投げてでも守る使命に駆られるのも遺伝子レベルで組み込まれてる事だ。ただ、俺は嬢ちゃんの一族が実験に成功したとは思えねぇな。

殺戮兵器を作り出すのに感情を付けちまったのは、一番の失敗だろうよ。そのせいで嬢ちゃんの中には矛盾が生まれてる。身を投げてでも守らなきゃいけねぇと思う反面、生きたいと思っちまうからな。

嬢ちゃん、あんたは巨人にも脅威だろうが、人間にも脅威だ。こんな人を殺すための兵器なんざ生かしておけねぇよな?」

「.........。

わたしは...人類にすら害なの...?本当に人を...殺すために...。この感情もすべてわたしの意志じゃないの...?」

「あぁそうだ。

恨むなら自分を作り出した一族を恨むんだな。だが...俺も悪魔じゃねぇ。死ぬ方法くらい選ばせてやるよ。ここで巨人化したアイツらに喰われるか、それとも...このナイフで自分の首を掻き切るか。

ただ嬢ちゃんに逃げられると困るからな、この手を離すつもりはねぇ」

そう言ってケニーはわたしの髪を掴んだまま、手にナイフを握らせた。

「どっちにしろ死ぬんだ。好きな方を選ぶといい」

銀に鈍く光るナイフをわたしは手に握る。首元へナイフを持っていった時、ケニーが閉じた口を再び開いた。

「.....言い忘れていたが...。あんたのその強さ、それは俺らと同じ血が流れているからだ。

アッカーマン家。お前の母親は東洋人とアッカーマンとの混血だったからな。嬢ちゃん、あんたの大好きなリヴァイもお前と同じ血が流れているんだぜ?」

やけに心臓の音が頭に響いた。


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