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「ニファ、話を進めてくれ」
「はい...。では、団長からの作戦命令を伝えます。
作戦は本日...、リーブス商会から第一憲兵へのエレンとヒストリアの引き渡しの日とされてる本日に決行されます。
第一憲兵はエレンとヒストリアの移動ルートから停留施設の選定まで、リーブス商会に託してきてます。これを利用しない手はありません。
我々はエレンとヒストリアをこのまま第一憲兵に引き渡します。そしてリーブス商会を通じてその終着点まで尾行するのです。
その終着点とは彼を意味します。
ロッド・レイス。ヒストリアの実父にして...
この壁の中の実質的最高指導者。
捕らえた第一憲兵によれば、上級役人からフリッツ王家まですべて彼の指揮下にあるようです。
彼の身柄を、我々調査兵団が確保します」
わたしたちが勝ち取るべき目標とは、現体制の変換に他ならない。
民衆の前で、仮初めの王から真の女王に王冠を譲ってもらい、これまでの体制は嘘であると民衆の前で認めさせ、そこに新たな光を見せなければならない。
「そして調査兵団の協力態勢が整えば、我々は...ようやく、ウォール・マリアにポッカリ空いた穴を『塞ごうとする』ことができるのです」
そして作戦決行の時間になった時、リーブス会長は殺害されエレンとヒストリアは拉致、そしてわたしたち調査兵団は民間人を殺したとの情報が街全体に流れた。
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「棺桶を2つ...馬車に乗せます」
「もう間違いねぇな...。
奴らが死体と寝る趣味を持つ変態じゃなきゃ、あれは第一憲兵で...棺の中身はエレンとヒストリアだ」
「ねぇねぇ、ニファ!わたしもそれで覗いてみたい!」
「ナマエさん、いいですよ、どうぞ」
「やったー!ありがとうっ!」
「.....それにしても、もう少しで見失うところでしたね。でも兵長がこの街を通ると踏んで先回りしたおかげで...」
「.......。
それが何か妙だ...。今までの第一憲兵の手際とは違うようだ。
リーブス商会をグルだと睨んだあたりといい...、どうも思考が俺と被る。
俺...というより、ヤツか...」
「ヤツとは?」
「んんんん...よくわからないや。ニファ、返すね!ありがとう!」
「いえ!ありがとうございます...ってナマエさん逆に覗いたらそれは見えませんよ、ふふ」
「えぇっ!ほんとう!?」
「『切り裂きケニー』を知ってるか?」
「え?都の大量殺人鬼ですか?
彼を捕らえようとした憲兵が100人以上も喉を切り裂かれたという...。でもそれは何十年か前に流行った都市伝説ですよね」
「そいつはいる。すべて本当だ」
「え!?」
「ガキの頃、ヤツと暮らした時期がある」
「えぇ!?どうしたんですか急に...。
兵長ったら、こんな時に冗談言うなんて...」
「えっ?冗談なの、リヴァイ?」
思えば俺の思考はヤツの影響が強い...。
目標を集団で尾けた時は...、両斜め後方と...、見晴らしのいい高台___
その時、俺達のいる屋根の上に誰かが登った音がした。
「ニファ...ナマエ...!」
瞬間、俺達を襲った散弾。
「...なっ、...!?ニファ...!」
その散弾はニファだけでなく周りに控えていた兵士をことごとく襲った。
「よぉリヴァイ。大きくなったな。
お...!?
お前もあんまり変わってねぇな!?
ん!?そこの嬢ちゃんはまさか...、思わぬ収穫じゃねぇか!」
「ケニー!!」