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男の断末魔が部屋中に響き渡る。
「ついに始まったか.....」
ジャンが頭を抱える中、わたしは席から立ち上がる。その行動にみんなの視線がわたしに向けられた。
「さて、そろそろわたしの仕事かな...」
「ま...、まさかナマエさんも手伝うんですか!?」
ジャンが困惑した顔をして、そう尋ねてきたのでその言葉に頷く。
「まぁ、わたしはリヴァイとハンジみたいに直接手を下す方じゃないけど。それよりも残酷かもね」
「え.......」
そう言って部屋から退出した。
「まさか...、ナマエさんも...。俺はもっとナマエさんなら、こういうことは嫌がると思ってたが...。全然そんなこと無いじゃねぇか...。あんな涼しい顔してたら、今から拷問しに行くなんて誰も思わねぇよ...」
「お前、ナマエさんを勘違いしてるぞ。
あの人は...、大切な人以外はどうでもいいんだよ。ナマエさんはお前らが思ってるよりもずっと人間で、大切な人を守るためなら手段も選ばねぇ」
「お前...何言ってるかわかんねぇよ...」
****
「あなたがラルフだね」
「な...、何だ...」
両手を拘束され、床に座らされた彼がわたしを見上げる。
「うん。ちょっと協力して欲しいことがあるの。
あぁ...そうだ。もし逃げようとしたり、変な動きを1つでもしたら一瞬で首が飛ぶと思ってね。
あなたにはこれから大事な仕事があるんだから、逃げないでね?」
そう言うとラルフはくしゃりと顔を苦しそうにゆがめた。
「あんたはまるで...
天使の皮を被った悪魔だ。その姿に惑わされ、何人の人間が命を落としたんだろうな...」
悪魔。そんなこと、言われたことがなかった。誰かにとっては正義でも、誰かにとっては悪魔。つまりはそういうことだろう。
「悪魔...かぁ。
あなたにとってそうかも?でも、この行為は必ず誰かを救うってわたしは信じてるから」
そしてラルフを連れて、とある扉の前に立ちノックする。
「リヴァイ、ハンジ」
それだけ声をかけるとハンジは拷問するための道具を置いた。
ちらりと2人の奥に目をやると、椅子に拘束され、散々2人から拷問を受けたであろう顔が血塗れのサネスの姿があった。
「休憩しよう」
リヴァイがそう言い部屋から出てくる。
「準備できたよ」
「あぁ。じゃあ始めるとするか」
****
「ほら行け、グズグズするな。情けない奴め...。
爪一枚で全部喋りやがって...。サネスの手の爪はもう残ってねぇんだぞ。
だがヤツは喋らねぇ...お前とは大違いだ」
「知るかよ。そりゃあいつの勝手だ。
さっさと死んじまえばいいんだよ。王だの平和だの、暑苦しい奴で俺らは迷惑してんだ」
ラルフの首元にはナイフが突きつけられている。そして彼の目の前には原稿。
「あんた達で奴を殺してくれよ」
「お前らの証言と一致するか確かめるまではダメだ」
「もう俺のゲロしたことで当たってんのにぬかりねぇな。
なぁ...俺の牢にはベッドはあるのか?」
「安心しろ...飯も2食出してやる。サネスが吐けば相部屋にしてやる」
そしてリヴァイとハンジとわたしはサネスの閉じ込められている部屋へと戻る。
「おはようサネス。私も辛いんだけど頑張って拷問するよ。
君の希望通り嬲り殺しだ。本当に死んだら困るんだけどね。
さて、いらないのは右と左どっちの...」
「レイス家が、本当の王家だ」