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会長とともにやって来たのは、トロスト区前門の壁上。
そこでリヴァイは会長にある交渉を持ちかけていた。
「中央憲兵との交渉内容と、あんたらの目的が知りたい」
「交渉?そんなものは無い。命令され従った。
俺らの目的は"すべてを失わないために命令に従う"だ」
そして会長は夜襲も拉致も失敗したため、彼らリーブス商会はすべての財産を王政に没収され、会長を含めた数人の部下は何らかの理由で殺されるだろうと言った。
「一ついいことを教えてやるよ、旦那。
中央憲兵は頭が悪い。
普段巨人相手に殺し合いしてるようなヤツらに、俺らチンピラが何とかできるわけねぇだろってんだ。馬鹿だねヤツらは。
どうだい旦那?役に立っただろ?」
「あぁ...。ヤツらの頭は足りてないらしい。
それはわかるが...、
そんな馬鹿共に大人しく殺されていいのか、会長?」
リヴァイの言葉に会長は、バカだが人類の最高権力者共だと言った。そして、わたしたちも服すら着れないバカ、つまり巨人に食い殺されていると加えた。
「...なるほど、確かにそうだ。だが俺らは巨人を殺すこともできる。
巨人と同じだ。どうせ死ぬなら試してみればいい」
「だめだ」
「なぜ?」
「失敗して死ぬ部下が増えるだけだ」
「気にするな。どのみち同じだ」
そうだ。どのみち同じ。ここ、トロスト区に仕事を結びつけているリーブス商会が消えれば、この街は機能しなくなり...、路頭に迷うのは従業員だけではなく、街の住民すべて。
それならまだ中央憲兵に殺される方がよっぽどいいかもしない。
「それで?俺の部下とこの街の住民を餓死させねぇためなら、人類の奇跡をくれるってのか!?」
「その通りだ。
エレンとクリスタをお前らにやる」
「は?」
「えぇ!?」
その言葉にみんなが狼狽えたのがわかる。そしてリヴァイの言葉にミカサが声を荒らげた。
「リヴァイ兵士長!?」
「ただし条件を3つ受け入れろ。
1つ。リーブス商会は今後、調査兵団の傘下に入り中央憲兵や王政・法に背くこととする」
「な...!?戦争始めようって言ってんのか!?」
「2つ。リーブス商会は調査兵団を心から信用すること」
「...信用だと?そりゃ俺ら商人の世界じゃ、冗談を言う時にしか使わねぇ言葉だぞ?」
「商人?
俺は今あんたと...、ディモ・リーブスと話をしている。あんたの生き方を聞いてるんだ。あんたはどんな奴だ?
あんたの部下と街の住民を死なせて敗北するか、人類最高の権力を相手に戦うか。
どうせ正解なんかわかりゃしねぇよ。あんたの好きな方を選べ」
「は...素人が。条件をすべて聞かずに契約するバカがいるか」
「おっと失礼した。
3つ目だ。今後リーブス商会が入手した珍しい食材・嗜好品等は優先的に調査兵団に回せ。紅茶とかな」
最後の条件に過剰に反応したのはサシャだった。
そんな中、会長は呆れたような腹を決めたような顔をして笑う。
「あんた、商人よりも欲が深いらしい。
気に入ったよ」
「あんたは頭がいい」
「交渉成立だ」
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「この2人?」
「あぁ、間違いないよ。
ニックが殺された時に立ち会っていた中央憲兵の人間だ」
指示されたとおりに川に落とされた、中央憲兵の2人を拾い上げる。
これからわたしたちが相手にするのは巨人じゃない。もっと大きな、この国の政府を相手にするのだ。