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「中の様子はどうだ?」
リヴァイの声に窓を覗く。そこにはエレンに変装したジャンとヒストリアに変装したアルミンがいる...のだが...。
「急がないとアルミンの変装がバレちゃうかも...」
「はい。それにかわいそうです」
わたしとミカサは屋根の上に戻り、リヴァイにそう伝えた。アルミンが不幸なことに、あの容姿のせいでヒストリアの変装が似合いすぎて変なおじさんに絡まれている。本当にかわいそうだ。
「足の調子はどうですか?」
ちらりとミカサがリヴァイに目をやりそう質問した。
「割と動くようだ...。悪くない」
そろそろ動き始める時間になろうとしていた。
****
「ヤツらへの報告はまだ待てよ。俺達にはもう次はねぇんだ...」
「ん...?見張りは...?」
「オイオイ...。こういうもんはなぁ.....。
一旦は身ぐるみ剥がした所から始めるもんだろうが.....
は!?」
その男の言葉が引き金になったかのように、物陰に隠れて息を潜めていたミカサが飛び出し、1人の男の頭部に膝蹴りをした。
「ッ!?」
そしてリヴァイがもう1人、男の襟を掴んで投げる。
「くッ」
わたしは最初に話していた、おそらくこの中の指導者であろう男を投げ飛ばし、動きを封じる。するとジャンとアルミンが椅子から立ち上がり自分を縛っていたロープを手に持ち、男たちを縛り上げていく。
「急げ!!」
「コニー、本当に3人で終わり!?」
わたしが男を押さえながら声を出すと屋根の上にある窓からコニーが顔を出す。
「はい!全部です!近くには誰もいません!!」
コニーの方を向き目を逸らしていた時だった。男が手に小さな銃を構えた。
「...!」
その瞬間、上から矢が降ってきて銃に貫通した。
「お...おい!ナマエさんに当たったらどうすんだ!!」
「す、すみません...!でも...!」
「ううん、目を離したわたしがいけなかった。ありがとう、ジャン、サシャ」
****
外で見張りをしていた人間も含め、全員を拘束し建物の中に入れた。そしてリヴァイが、わたしが拘束したここのボスだと思われる男に声をかける。
「お前がここの商会のボスか?」
「違う...。違うんだ。俺は馬車の運送にコキ使われてる、ただの老いぼれだ...。
だから.....、ひでぇことはやめてくれよ旦那...。俺は何にも知らねぇんだ.......」
話している途中で男は小さく声を漏らした。その目線の先にはミカサがいる。
「ん?
...あぁ。あの時...、扉を塞いでた...。
こいつです。以前、街で部下から会長と呼ばれていました」
男は小さく舌打ちをした。
「そうらしいな。
会長、あんたの巣じゃ落ち着かねぇ...。場所を変えよう」
「しょうがねぇな」
「部下にはもう少しここで横になっててもらうことになる。
...ん?
おい、あいつの猿ぐつわを絞め直せ」
「あっ、うん」
なんだか1人、様子のおかしい男がこちらを見ている。その男に近づこうとした時、アルミンがそれを制止した。
「僕がやります」
「ほんとう?ごめんね、ありがとうアルミン」
そしてアルミンは男の元へ行く。猿ぐつわが取れた時、男がアルミンに何か話していた。
「聞いたよ...。君...本当は...男の子なんだってな...。
もしかして...あの小さな可愛い子も男の子だったりするのか...?
君のせいで...俺は.....、俺は普通だったのに...。君のせいで今大変なんだから...」
「アルミン...。俺がやるから」
ジャンがアルミンにそう声を掛けていた。
「何やってる、早くしろ」
「ちょっと...いや、かなりアルミンかわいそう...」
ついそんな言葉が漏れた。