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「全員読んだ?」
「は...はい」
「リヴァイ兵長、ナマエさん...これは?」
みんなが読んだのを確認して、リヴァイの方を見てからこくりと頷く。するとリヴァイは小さなメモ用紙ほどの大きさの紙に火をつけ燃やした。
「エルヴィンの指示だ。
お前らはヤツを信じるか?信じるバカは来い...出発だ」
そしてわたしたちは身を置いていた兵舎を出て山奥へと向かった。そこからはかつての兵舎が見える。
「危ねぇ...」
コニーがそう呟いた。山奥へとたどり着き、そこから兵舎を見ると間もなく兵舎には複数人の手によって火が放たれようとしていたのだ。
「今夜もあそこに寝てたら...、俺達どうなってたんだ...?」
「兵長...あいつらが中央憲兵ですか?」
アルミンがそう問う。
「さぁな。奴らが直接こんな現場に出向くとは思えんが...。俺も舐められたもんだ。
合流地点まで急ぐぞ。月が出てて助かった」
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わたしたちはトロスト区へと到着した。
街の中を歩いていると、気がつけばわたしたちは街の人々に囲まれていた。
「オイ...あんた、リヴァイじゃねぇか!?」
「あ?」
「本当だ!俺も見たことあるぞ!人類最強の兵士、リヴァイだ!!」
「オイオイ、小せぇな...。馬に乗ってるところしか見たことなかったが...ん?
あんたは...副兵士長のナマエか!?
本当にまだ年端もいかねぇ嬢ちゃんじゃねぇか!」
わらわらとあっという間にわたしたちの周りは人だかりができ、歩みを止められてしまった。
「.......邪魔だが」
「まぁ聞いて下さい、兵士長!みじめな俺達の話を。
お前ら兵士が大袈裟に騒いだ避難作戦のせいで職に溢れちまったんだよ」
「俺らだけじゃねぇ。この壁際の街には度重なる不信感で人が寄り付かねぇ。
とにかく儲けがねぇし食えねぇ。どっか行っちまった駐屯兵の代わりにコソ泥がわんさか入って来やがった」
「.....なのに税は高ぇままで、俺達にどうしろって言うんでしょうか?
どうしてこうなった?なぜ巨人に何回も攻め込まれてんです?
俺にはわかる。あんたら調査兵団の働きが足りねぇからだよ。
俺のやってた商売はこうだ...、稼げねぇのは自分が悪い。労働に対価が見合わねぇなんていつものこと。
だがあんたらは違うでしょ?働きが足りねぇし結果がねぇのに食えてる...」
「なぁ?こんな街中をぷらぷら歩いてお買い物か?」
「女連れて歩いて...いいご身分だな」
その時わたしの腕が掴まれた。
「...ちょっと...っ、離してください」
「まだ小せぇと思ったが...、随分整った顔してんじゃねぇか」
「.....離して」
バッ、と腕を振り払う。その反動で男性はよろめいたのでそのまま気にせずわたしは歩く。
「あんたらに少しでも良心ってもんがあるのなら...、金を置いて行けよ...。
調査兵団が余分に取りすぎちまった分をよ」
「小せぇのに力は強いんだな...」
「...しつこい...っ」
先ほどわたしの腕を掴んできた男が再びわたしの腕を掴んできた。さすがにしつこいと感じ睨みつけるが、男は嫌な笑みを浮かべ意に介さない。
「.....!
おい!気を付けろ!」
リヴァイが突然声を上げた。
「は?何に気を付けるって?
人類最強の兵士がよォ!!」
やたらとリヴァイに絡んでいた男がリヴァイ胸ぐらを掴む。その光景にわたしは掴んできた男の腕を一気に振り払い、胸ぐらを掴んでいる男の腕を掴みリヴァイから思いきり離す。
そしてリヴァイは目の前にいた男を蹴った。
その瞬間、激しい馬の駆ける音が鳴り響く。
「馬車が突っ込んで来る!!」
わたしたちの間にものすごいスピードで突っ込んできた馬車は、わたしたちの仲間を攫った。
「あッ!!
アル.....じゃなくて、クリスタとエレンが!!
また攫われてしまったああぁ!!」