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「お前ら!!今すぐ飛べ!!」
その言葉にわたしたちは一斉に鎧の巨人から離れ馬へに乗り移った。
向かってくるのは大量の巨人。エルヴィンが...巨人を引き連れてきた...!?
「総員散開!!巨人から距離を取れ!!」
巨人たちは一目散に鎧の巨人へと向かっていく。
「何だこりゃ!?地獄か...?」
ジャンがそう口にした。無理もない。これじゃあまるで、地獄絵図だ。巨人が巨人を襲う様をわたしたちはただ見る。そうしているとエルヴィンが声を出した。
「いいや.....これからだ!
総員!!突撃!!」
「.…....!」
「人類存亡の運命は今!!この瞬間に決定する!エレンなくして人類がこの地上に生息できる将来など永遠に訪れない!!
エレンを奪い返し即帰還するぞ!!心臓を捧げよ!!」
そして轟く兵士の雄叫びと、馬の駆ける音。わたしたちは駆け出す。
すると巨人に襲われている鎧の巨人のベルトルトを守る手が放された。
「手を放した!」
「今なら...!」
「オイ、ミカサ!?周りの巨人が見えねぇのか!?
つーか...誰かあそこまで行けんのかよ!?この巨人の中を掻い潜って...!」
ジャンがそう言ったけれど、わたしたちは止まることがない。ただひたすらに目指すのは鎧の巨人の元だ。
「進め!!」
エルヴィンの声でさらに加速しようとしたその瞬間、エルヴィンが巨人に片腕を食べられた。
「は..........ッエルヴィンッッ!!!」
「進め!!」
エルヴィンの咆哮に、急いでブレードを引き抜いた手がさまよう。
「エレンはすぐそこだ!!進め!!」
「.....く...ッ!」
振り向いた顔を前方に向け、馬の手綱を強く握り速度をあげる。
巨人に食べられていく兵士たちに目をつぶり、巨人の中を掻い潜っていく。そして鎧の巨人に近づいた時、ミカサが立体機動に移りベルトルトを狙う。
しかしベルトルトはミカサの攻撃を避け、その瞬間ミカサが巨人に拘束される。
「あァッ!」
「ミカサ.....ッ!!」
急いでわたしも立体機動に移りミカサを拘束した巨人のうなじを削ぎ落とす。
エルヴィンがいないこの場を...この場を切り抜けられるのは...!
「アルミン.....ッ!!行って!!」
「.......!?
.....はい...っ!!」
アルミンだ。アルミンならきっと何か思いつく!!
アルミンが進める道を作るために巨人を倒していくことにわたしは集中しろ!
そしてアルミンがベルトルトの元へたどり着いたのを確認した。彼は黙って口を開かない。しかしすぐ何か思いついたように、少し笑ったように見えた。
「いいの?二人共...。仲間を置き去りにしたまま故郷に帰って...。
アニを置いていくの?
アニなら今...極北のユトピア区の地下深くで拷問を受けてるよ。彼女の悲鳴を聞けばすぐに、体の傷は治せても痛みを消すことができないことはわかった。
死なないように細心の注意が払われるなか、今この瞬間にもアニの体は...休むヒマも無く...様々な工夫を施された拷問が.....」
「悪魔の末裔が!!根絶やしにしてやる!!」
顔色を変えたベルトルトが立ち上がったその時だった。彼の胸は引き裂かれ、同時にエレンをつなぎ止めていたヒモが切れる。
「.....エルヴィン...!!」
エルヴィンによって切られたヒモはエレンを放し、エレンが落ちていく。その体をミカサが落下する前に抱きとめた。
「.......取り戻した...!」
「総員撤退!!!」
その声とともにわたしたちは身を翻して駆け出す。その時、巨人の体がこちらに投げられた。
ライナー...!巨人を投げてわたしたちを邪魔しようと...!?
「あっ!!エレン!!ミカサ!!」
その声に振り向くと投げられた巨人で馬がバランスを崩したのか、エレンとミカサが地面に放り投げられていた。
「まずい...!エレンッ、ミカサッ.....!!...ッ!?」
ミカサたちの元へ向かおうと馬に合図をした時、巨人がこちらに再び投げられる。
「エレンが食べられてもいいってこと...!?」
このままだと鎧の巨人がこちらへ来る...!
どうしたら...!どうしたらいい...!?
「ジャン!!」
アルミンの叫び声に振り向くとジャンが馬から落ち、気を失っていた。それをアルミンが抱えている。その2人に近づく1体の巨人の姿。
「.......!!
ジャン!!アルミン!!」
急いで2人の元へ向かう。
ジャンを抱えたままで攻撃なんてできるわけない...!
立体機動に移り2人に近づく巨人を倒す。
「ナマエさん.....!!」
「アルミンはわたしの後ろにいて...!」
2人を守らなくちゃいけない...!でも、ミカサとエレンが...!
「どうしたら.....ッ!!」
ミカサとエレンの元へ向かわなくちゃいけない。でも...!アルミンとジャンを狙う巨人を倒すことで精一杯...!
「.......っ」
「.......!
ナマエさんッ!!!」
アルミンの声で振り向く。近づく巨人を倒した時、後ろにもう一体いたことに気づかなかったのだ。
「しまった...!!」
巨人に掴まれる。そう覚悟し目を瞑った。
しかし巨人の手は一向にわたしに届かない。
「.....えっ...!?」
目を開くと巨人が一斉にミカサとエレンを襲おうとしていた巨人へと走り出したのだ。
「なん.....で.....?
.......!それよりも、アルミン!ジャンを抱えて撤退する!!」
「は...はい!!」
ジャンを抱えるアルミンを支えながら馬へと移動させる。その時エレンの声が聞こえた。
「来るんじゃねぇ!!てめぇら!!クソ!!ぶっ殺してやる!!」
その声で巨人は再び動き出し、鎧の巨人へと一直線で向かっていく。
「...まさか.....、エレンが...?」
エレンが...巨人を操った...?!
「この機を逃すな!!撤退せよ!!」
エルヴィンの声でわたしたちは鎧の巨人とベルトルトに背を向け駆け出す。
突然ヒストリアがユミルを呼ぶ声が聞こえ振り返ると、ユミルがベルトルトたちの元へ行く姿が見えた。
ユミルが取った行動の意味がわからなかったが、鎧の巨人がそれ以上追って来ることは無かった。