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その後、わたしたちは壁上へと移動した。
ユミルの状態は酷く、手足がなくなり内蔵はぐちゃぐちゃになってしまっているらしい。
....."普通"であればきっと死んでいた。
「どうか...!信じてください!
本当なんです、ユミルは私達を助けるために正体を現して巨人と戦いました!自分の命も顧みないその行動が示すものは我々同士に対する忠誠です!
これまでの彼女の判断がとても罪深いのも事実です...。人類にとって最も重要な情報をずっと黙っていました...。
おそらく...、それまでは自分の身を案じていたのでしょうが...。しかし彼女は変わりました!
ユミルは我々人類の味方です!ユミルをよく知る私に言わせれば彼女は見た目よりずっと単純なんです!」
クリスタ...いや、ヒストリアがハンジに向けてそう話す。ユミルの戦いの後を見る限り、彼女の言ったことは嘘ではないだろう。...けれど、世界はきっとそれを黙認はしないだろう。
「もちろん、彼女とは友好的な関係を築きたいよ。これまでがどうであれ、彼女の持つ情報は我々人類の宝だ.....仲良くしたい。
ただね...。彼女自身は単純でも、この世界の状況は複雑すぎるみたいなんだよね...」
「...ねぇ、本名はヒストリア・レイスなの?」
わたしの質問にヒストリアは頷く。そしてハンジがわたしに続いて質問する。
「レイスってあの貴族家の?」
「.....はい」
「.....そう。よろしくね、ヒストリア」
そしてわたしたちはユミルの元へ向かった。ハンジがユミルの状態をモブリットに尋ねると、依然昏睡したままと答えた。
「とりあえずトロスト区まで運んでまともな医療を受けてもらわないとね。任せたよ」
ハンジがニファにそう言うと、彼女は了解です、とだけ答えた。それだけ伝えるとハンジは踵を返す。
「さて...。我々は...穴を塞ぎに来たんだった...」
わたしとハンジはエレン達の元へ向かい、全員いることを確認する。
「ユミルの件はひとまず後だ。
壁の修復作戦を再開しよう。しかし...、現場はもっと巨人だらけだと思ってたんだが.....ん?」
「ハンジ?」
ハンジの目線を追っていくとそこには兵士が複数人、下からわたしたちを見上げていた。
「ハンネスさん」
ミカサがおそらく知り合いであろう兵士の1人の名前を呼んだ。
「駐屯兵団先遣隊!穴の位置を知らせにきたんだね」
わたしたちはミカサがハンネスさん、と呼んだ人が上がってくるのを待った。
「.....穴がどこにも無い」
「.....え?」
開口一番に告げられたその言葉にわたしたちは呆然とする。
「夜通し探し回ったが、少なくともトロスト区からクロルバ区の間の壁に異常はない」
「何だって!?」
「クロルバ区の兵とかち合って引き返してきたのさ。道中で巨人とも出くわさなかったが」
その情報にアルミンやエレンが問いつめる。
「でも...巨人は実際に壁の内側に出てるんだよ」
「ちゃんの見たのか!?まだ酒が残ってんじゃねぇのか!?」
「飲むかよ!っていうか...お前らは何でこんな所にいるんだ?」
****
「ハンジ...、壁に穴がないって...。どうするの?」
「う〜ん...。
壁に穴が無いのならしかたない...。一旦トロスト区で待機しよう」
「穴はないのにどうして巨人が現れたんだろう...」
独り言のように呟く。その言葉を拾ったのか、ハンジが口を開いた。
「まさか...、ついに地下を掘る巨人が現れたとしたら.....。大変だ...」
「そうなると位置を特定するのは相当困難ですよね」
モブリットがそう言った。もし本当に穴を掘る巨人が現れたのだとすれば、その巨人による被害は計り知れない。
「今はとにかくユミルを安全に運ぶことを考えよう。まだ地面を走るには巨人がいるし」
「...そうだね。壁に穴がないのならユミルのことを優先しよう」
ハンジに着いて歩き出したその時だった。
「うあああああああああ!!」
誰のものともわからない断末魔が響き渡る。
「.....!?
ベルトルト...ライナー...!?」
振り返り目に入ったのは血まみれのライナーに刃を構えたまま突き飛ばされるミカサ。
わたしたちは急いでエレンの元へ向かう。
「エレン!!逃げろ!!」
アルミンが床に座り込んで動かないエレンに声をかける。しかしエレンは動かない。
何が...何が起きている!?
なんで、ライナーは手を切り落とされているのに、ベルトルトは首から血を流しているのに...動けるの...?!
刹那、辺りは爆風に襲われる。
「.....ッ!
...なッ.......!?エレンッ!」
爆風に耐えて目を開けた時、眼前には鎧の巨人がエレンを捕まえている光景が広がっていた。
鎧の巨人はエレンを捕まえたまま壁から降りていく。
「.....そんなッ...!」
「ライナー...ベルトルト...。
このッ...
裏切りもんがあぁあああああああ!!!!」