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ウトガルド城へ向かう道の中、わたしは出発する前にハンジが話してきたことを思い出していた。
出発する前、104期生であるエレン、ミカサ、アルミンと彼らを指導していたわたしはハンジに呼び止められた。
「ようやくアニの身辺調査の結果が届いたんだが...。
104期に2名ほど、アニと同じ地域の出身者がいるようなんだ。ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバー」
その名前にわたしたちは目を見開いた。
「まぁしかし...。5年前当時の混乱のせいで戸籍資料なんかどれも大雑把な括りでいい加減なもんだ。管理状態がずさんなせいで探すのに今まで手間取ってしまったらしい」
ライナーとベルトルトは前回の壁外調査で"誤った"作戦企画書によりエレンが右翼側だと知らされていたグループ。そして女型の巨人...アニが現れたのも右翼側だ。
「これだけで何が決まるってわけじゃないけど一応ね...。訓練兵時代の3人と、ナマエちゃんも指導員としての関係性が知りたい。
どう思う?」
ハンジの言葉にそれぞれが答える。
アルミンは、3人が同郷だとは知っていたがアニと親しい印象はなかった。
エレンも同様にアニと2人が話している場面はあまり見た事がない。
ミカサは覚えていない、と言った。
「わたしも.....個人とは話したことがあるけれど、3人が親しげに話しているところは見たことがないかな...」
そしてエレンはその疑いは低い、と言う。
「無口なベルトルトは置いといても...、ライナーは俺達の兄貴みたいな奴で、人を騙せるほど器用じゃありませんし...」
「僕もそう思います。ライナーは僕とジャンとで女型の巨人と戦ってます。ライナーは危うく握り潰される直前で.....」
「アルミン?」
急にアルミンの言葉が止まる。まるで話している途中で何かを思い出したような。わたしもエレンも右翼側に配置されていなかったので当時の状況は知らない。
「ライナーは逃げられたんだけど...。アニは急に方向転換してエレンがいる方向に走って行ったんだ。
僕も...推測でエレンは中央後方にいるんじゃないかと話してたんだけど...、アニに聞かれる距離ではなかったし...」
「何だそりゃ?」
ハンジが何かを考えるように口元に手を当ててから口を開いた。
「話してたって...その3人で?エレンの場所を気にしてる素振りは無かった?」
少し間を置いてからアルミンは何か思い出したように話し始める。
「エレンの場所を話したのは...、ライナーにそのことを聞かれてからでした...。
それに...、あの時女型の巨人が凝視してた手の平に刃で文字を刻むこともできたかもしれない...。
ライナーなら!」
「は...?何だそりゃ...。
何でそんな話になるんだお前は...」
「エレン!」
エレンは受け入れられない、というふうアルミンに詰め寄ったのをハンジが制止し、言葉を続けた。
「いや...全員聞くんだ。もし...
ライナーとベルトルトを見つけても、こちらの疑いを悟られぬように振る舞え。もちろん、アニ・レオンハートの存在には一切触れるな。
彼らがアニの共謀者であってもなくても、彼らを上手く誘導して地下深く幽閉する必要がある」
実際、2人を疑いたくはないけれど疑いの余地は十分にあるだろう。アルミンの言ったことが本当であれば。もう、敵は巨人ではないとわかってしまったのだから。
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目的地のウトガルド城に近づき、建物が見えてきた時、わたしたちは驚愕した。
「あれ...は...!」
崩れ落ちた城跡と、群がる大量の巨人。
なんで...!?どういうこと!?
...ううん、考えているヒマはない。今は急いでみんなを助けなくちゃ!!
急いでみんなの元へ向かう。その時、クリスタに向かって巨人が腕を伸ばしていた。
「クリスタ.....ッ!」
間一髪のところで巨人を倒す。
「ナマエさん!?」
「な...、ナマエさん...何で!?」
みんなの驚いた顔が目に入るけれど、今はそれどころではない。
「みんな下がってて。
後はわたしたちに任せて!」
そしてわたしたちは一斉に巨人へと飛びかかる。
「後続は散開して周囲を警戒!
他すべてで巨人が群がってる所を一気に叩け!!」
巨人を倒している時、そんなハンジの声が聞こえた。
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城に群がる巨人をすべて倒し、みんなの元へ向かった。その時、わたしたちはユミルが巨人化できる人間であったことを知らされる。
クリスタはユミルを抱きかかえ、彼女の名を呼ぶ。するとユミルは薄らと目を開き、瞳の中に確かにクリスタをとらえた。
「ユミル.....。
私の名前...、ヒストリアって言うの...」
その言葉にユミルは穏やかに微笑んだ。