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「いきなりウォール・ローゼが突破されるなんて...。我々に...何か...手が残されているのでしょうか...。

これからエレンを現場に向かわせたとしても...とても上手く行くとは思えない...」

アルミンがそう呟いた。
わたしたちはウォール・ローゼが突破されたと聞いた後、ストヘス区から突破されたとされる場所まで馬車に揺られながら向かっている。

馬車にはみんなからの視線を集める見慣れない人物もそこに同乗していた。

「それに.....。

なぜ...ウォール教の司祭まで一緒に...」

アルミンがそう言うとハンジは司祭の肩をぐっと引き寄せた。

「あぁ...ニックとは友達なんだよ。ねー?」

それでも尚、司祭は頑なに口を開こうとはしなかった。

「彼は壁の中に巨人がいることを知っていた。でもそれを今まで黙っていた。

なぜかは知らないが、自分が死んでもその他の秘密を言えないというのは本当らしい...。彼ら教団は何かしら壁の秘密を知っている」

ウォール・ローゼが突破されたという情報とともに、壁の中に巨人がいるという情報与えられた。今までわたしたちは巨人に怯え、巨人に護られてきたという真実を知ることになったのだ。

エレンは急に立ち上がり、司祭に詰め寄る。

「他の教徒に聞いてもよかったんだけど...。彼は自ら同行することを選んだ。状況が変わったからね...。

現状を見てもなお、原則に従って口を閉ざし続けるのか、自分の目で見て...自分に問うらしい...」

「イヤイヤイヤイヤ...。それは...おかしいでしょ。

何か知ってることがあったら話して下さいよ...。人類の全滅を防ぐ以上に重要なことなんて無いでしょう」

落ち着きを取り戻したらしいエレンは、それでも変わらず絶望したような表情でそう言った。
それに対してハンジはどうだろう...と言う。

「私には司祭は真っ当な判断力を持った人間に見えるんだ...。もしかしたらだけど...

人類滅亡より重要な理由が、あるのかもしれない...」

すると司祭の右隣、わたしの左側に座っているリヴァイが口を開く。

「まぁ...こいつには少し根性があるらしいが、他の信仰野郎共はどうだろうな...。全員がまったく同じ志とは思えんが...。

まぁ、質問の仕方は色々ある...。俺は今...役立たずかもしれんが...こいつを1人見張ることぐらいできる。くれぐれも...うっかり体に穴が空いちまうことが無いようにしたいな...お互い」

リヴァイの懐にある銃の銃口が司祭に向けられているのが見えた。そこから視線を移しハンジの手元を見る。ハンジの手の中にはずっと気になっていた物がある。

「ハンジ.....。その石みたいなのって...?」

わたしがそう問うとハンジはその石をみんなが見えるように持つ。

「あぁ...これは、ただの石じゃない。女型の巨人が残した硬い皮膚の破片だ」

その言葉にわたしたちは驚く。しかし1番反応を見せたのはアルミンだった。

「消えてない!?」

「そう!アニが巨人化を解いて体から切り離されても、この通り!蒸発もしない...。消えてないんだ」

ハンジは続けて、壁の破片と見比べてみると構造がよく似ていたと言い、壁は大型巨人が支柱になりその表層は硬化した皮膚で形成されていた、と言った。

「本当に...アルミンも言ってた通り...」

ミカサが驚いたように呟く。そしてアルミンは、あ!と声を上げた。

「じゃ...じゃあ...」
「待った!」

アルミンの発言をハンジは制止し、言わせてくれ、と言った。

「このままじゃ破壊されたウォール・ローゼを塞ぐのは困難だろう...。穴を塞ぐのに適した岩でも無い限りはね...。

でも、もし...巨人化したエレンが硬化する巨人の能力で壁の穴を塞げるのだとしたら」

「俺で...穴を塞ぐ...!?」

元の材質が同じならば、巨人化した後も蒸発せず石化した巨像を残せるのなら...。壁を塞げる可能性はある。そうすればウォール・マリアの奪還も...。

アルミンが従来では、壁外に補給地点を設けながら進むしかなかったがその必要が無くなるとすればシガンシナ区まで最速で向かうことも可能だと言った。

「夜間に壁外の作戦を決行するのはどうでしょうか?」

「夜...に...?」

夜は巨人が動けない。人数され絞れば夜明けまでにウォール・マリアへ行けるかもしれない、と言った。状況は最悪だ。それでも希望があるのなら。

「すべては...エレンが穴を塞げるかどうかに懸かっているんですが...」

「...こんなこと聞かれても困ると思うんだけど...。それって、できそう?」

エレンは困惑した表情で口を開いたまま応えない。リヴァイはそれに見兼ねたのか、できそうかどうかじゃねぇだろ...と言った。

「やれ...やるしかねぇだろ。
こんな状況だ...。兵団も死力を尽くす以外にやることはねぇはずだ。必ず成功させろ」

「.....はい!
俺が必ず穴を塞ぎます!!必ず...」

ウォール・マリアの地下室にたどり着けば、巨人の謎もわかる。エレンの...父親の消息も。

「ん...もうすぐエルミハ区だ」

「俺と司祭はここまでか...。後は任せたぞ。お前らはエルヴィンが決めた即席の班だ」

わたしのケガは完璧に完治したわけじゃない。けれど、戦うには十分だった。こういう時、わたしの傷の治りの早さは助かる。リヴァイは依然としてケガが治っていないからわたしたちとは別行動だ。

「わかってるな、アルミン。お前はその調子でハンジと知恵を絞れ。

ミカサ...お前の能力のすべてはエレンを守ることに使え!」

「はい!もちろんです」

「...お前が...なぜエレンに執着してるか知らんが...。自分を抑制しろ。もうしくじるなよ」

「.....はい。もちろんです」

「.....ナマエ。前に言ったように、無茶はして構わん。

...だが、無茶しすぎるな。いいな」

「...うん!」


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