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「やはりか!!...来るぞ!
女型の巨人だ!!」
光の後、現れたのは捕えられたはずの女型の巨人だった。
「クソッ...よくも!
今度こそやります!!俺が奴を!!」
「だめだ!!
俺達3人で女型の巨人を仕留める!エレンはこのまま全速力で本部を目指せ!!
ナマエさんはエレンをよろしくお願いしますッ!!」
「.....わかった...!」
「俺も戦います!」
「これが最善策だ!お前の力はリスクが多すぎる!!」
「何だてめぇ...俺達の腕を疑ってんのか!?」
「そうなのエレン?私達のことがそんなに...
信じられないの?」
「エレンッ!」
「.....っ!
我が班の勝利を信じてます!!」
俺とナマエさんは先輩達から離れていく。
進んだところで振り返ると女型の巨人は先輩達にやられていく様が目に映る。
強えっ...!!あの女型が一方的に...。それも声掛けなしでいきなりあんな連係が取れるなんて...。
きっと...仲間同士で信じあってるから可能なんだ...。
進もう...。振り返らずに皆を信じて進めばきっと...。それが正解なんだ。俺にもやっとわかった...。
その時、ふとリヴァイ兵長の言葉が頭を過ぎる。
『...結果は誰にもわからなかった』
引かれるように俺は後ろを振り向く。
壁に凭れかかる女型に向かってエルドさんが刃を振る。その瞬間、エルドさんの上半身は女型の口の中へ消えた。
「エルド!!」
「な.....!?何でよ...!!まだ目が見えるわけない!!まだ...30秒も経ってない!!
...!?片目だけ!?片目だけ優先して早く治した!?そんなことができるなんて!!」
「ペトラ!!早く体勢を直せ!!」
女型の巨人はペトラさん目掛けて駆け出す。
「ペトラ!!早くしろ」
オルオさんの声と被るように、ペトラさんは...女型に潰された。
「.....オイ。死ね」
響くブレードが砕け散る音。
「.....なぜだ。刃が通らねぇ...」
****
「エレン」
「.....!?ナマエ...さん!?」
「エルドには...エレンを守るように言われたけれど、もう我慢できない。わたしは...女型を殺す」
限界だった。これ以上はもう、アイツの好きにはさせない。
「ナマエさんッ!!!」
「ごめん、エレン」
エレンに背を向け、わたしは女型に向かっていく。アイツはオルオが項を狙った瞬間、そこを硬質化させた。
...でもきっと、それ以上の速さで攻撃すればコイツは硬質化が間に合わない。
「.....わたしはあなたを...許さない」
...まずは足からだ。
アンカーを足に刺し、一直線に女型へと向かい腱を切る。ガクン、と女型が体勢を崩したのを狙って次は腕へとアンカーを刺す。
「.....よくも...ッ!!」
肩の筋を切断する。
次はコイツの視力を奪ってやる...!よくも...よくもみんなを...!
女型はエルド達が最初やったように体勢を崩し地に膝をつく。女型の近くの木へとアンカーを刺して視力を奪うために刃を構える。
そして女型の顔の前に移動し、目を狙おうとした時、女型と目が合った。
その瞬間、わたしは心臓を掴まれたかのようにヒュ、と息を漏らす。
「.....なん、で...?」
なんで。なんで。
どうして、あなたがここにいるの?
どうして...あなたが女型の巨人なの...?
「ア、ニ.....?」
わたしは途端に動けなくなる。女型の巨人はわたしに向けて腕を伸ばした。けれど、腕が一瞬だけ躊躇するかのように空中で動きを止める。
「ナマエさんッ!!!」
遠くでエレンの声が聞こえる。
そうか。わたしは...投げられたんだ。
そう理解するにはそこまで時間はかからなかった。女型の巨人に...いや...。アニに投げられた。
それはスローモーションのようで、絶望に歪んだエレンの顔と、わたしを投げた瞬間、なぜか揺れた青い瞳が目に焼き付く。
そして、わたしの涙が空中へと溶けていく。
どうして、気づかなかったんだろう。どうして、気づけなかったんだろう。
助けてあげる、だなんて大事をたたいておいて、わたしがしたことは彼女を苦しめることだったんじゃないか。...バカだ。わたしはどこまでもバカで、最低な人間だ。
「.....ごめん...ごめんね。アニ.....」
リヴァイは今どうしているんだろう。お別れ、伝えられなかったなぁ...。
こんな時でさえ、リヴァイの顔が頭に浮かぶわたしは...おかしいかもしれない。
ブツリと音を立てて、真っ暗になった。
「こいつを、殺す」