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一瞬で現れたのは女型の巨人。そいつは物凄い速さで俺達の後ろから迫ってくる。
そいつの目は確実に俺を捕らえていた。

「クッ...この森の中じゃ事前に回避しようが無い!」
「速い!!追いつかれるぞ!!」
「兵長!!立体機動に移りましょう!!」

先輩達が口々にそう言った時、後ろから増援の兵士がやって来た。

「背後より増援!!」

一瞬だった。
それは一瞬の出来事のように、兵士2人は巨人に捕食されるのではなく、潰された。

「兵長!!指示を!!やりましょう!あいつは危険です!!俺達がやるべきです!!」
「ズタボロにしてやる...!」

馬鹿め!自分から地獄に来やがった...!お前が追っかけてんのは巨人殺しの達人集団だ!

そう安堵したのも束の間、リヴァイ兵長からは何も指示がない。

「リヴァイ兵長!?」
「指示をください!!」

すると、それまで口を開いていなかったナマエさんが振り返る。

「みんな、耳を塞いで」

その瞬間、リヴァイ兵長が何かを撃ち上げた。それは耳が痛くなるような音を立てて辺りに響く。

「音響弾!?」

「...お前らの仕事は何だ?その時々の感情に身を任せるだけか?

そうじゃなかったハズだ...。この班の使命は、そこのクソガキにキズ1つ付けないよう尽くすことだ。命の限り」

リヴァイ兵長の言葉に俺は困惑する。
...俺を監視するためなんじゃないのか...!?

「俺達はこのまま馬で駆ける。いいな?」

「了解です!」

ペトラさんがそう答えた。

「え...!?
駆ける...って....。一体どこまで...!?
それに!ヤツがもうすぐそこまで!」

俺はそうリヴァイ兵長に訴える。その時、再び背後から増援が来た。

「増援です!!早く!!援護しなければまたやられます!」
「エレン!前を向け!!」
「...グンタさん!?」

「歩調を乱すな!!最高速度を保て!!」
「.....!?エルドさん!!

なぜ.....リヴァイ班がやらなくて誰があいつを止められるんですか!」

そう言っている間にも1人、また1人と巨人に殺されていく。

「今なら...まだ間に合う!」
「エレン!前を向いて走りなさい!」

「戦いから目を背けろと!?」
「...ええ!そうよ!兵長の指示に従いなさい!」

「見殺しにする理由がわかりません!それを説明しない理由もわからない!なぜです!?」
「兵長が説明すべきではないと判断したからだ!!

それがわからないのはお前がまだヒヨッコだからだ!わかったら黙って従え!!」

...何で俺は人の力にばっかり頼ってんだ。自分で戦えばいいだろ。

俺が口元に手をやるとペトラさんはその行為を止めようとする。それが許されるのは、俺自身の命が危うくなった時だけ、そういう約束だと。

「.....エレン。お前は間違ってない。やりたきゃやれ」

ペトラさんが焦ったように兵長!?と呼んだ。

「お前と俺達の判断の相違は経験則に基づくものだ。

だかな...そんなもんはアテにしなくていい、選べ...。自分を信じるか俺やナマエやコイツら、調査兵団組織を信じるかだ。

俺にはわからない。ずっとそうだ...。自分の力を信じても...信頼に足る仲間の選択を信じても...。
結果は誰にもわからなかった...。

だから.....まぁ、せいぜい...、悔いが残らない方を自分で選べ」

あいつは刻一刻と迫ってきている。そうなれば、選択肢は1つだ。再び手を口元へ運ぶ。

その時、ペトラさんが俺の名を呼んだ。

「.....信じて」

その言葉に、ペトラさんの手元の傷に心が揺れる。

「エレン!遅い!!さっさと決めろ!!」
「進みます!!」

そう声を張り上げた時、後ろで兵士の声が聞こえた。

「ごめんなさい.....」

最後の増援の兵士を殺した瞬間、巨人は一気に加速し出す。

「目標、加速します!!」

「走れ!このまま逃げ切る!!」

不可能だ、そう思った。でも、仲間を見殺しにしても、前に進むことを選んだ。

リヴァイ兵長もナマエさんも前を見続けている。先輩達も...。兵長を信じて全てを託している。

俺は...なぜこっちを選んだ...!助けられたかもしれない命を...見殺しにしてまで!俺は...俺は...そうだ。欲しかった。

新しい信頼を、あいつらといる時のような心の拠り所を...。もうたくさんなんだ。化け物扱いは...仲間外れは...もう...。だから...仲間を信じることは正しいことだって...そう思いたかったんだ。

...そっちの方が、...都合がいいから。

「撃て!!」

刹那、エルヴィン団長の声と耳を覆いたくなる轟音。

「え!?」

「少し進んだ所で馬を繋いだら立体機動に移れ。

俺とは一旦別行動だ。班の指揮はエルドに任せる」

「...リヴァイ」

ナマエさんがリヴァイ兵長を呼んだ。そしてリヴァイ兵長はしばらく黙った後、口を開く。

「.....わかっている。後は頼んだ、ナマエ」

「うん。そっちの方もよろしくね、リヴァイ」

「...あぁ。

適切な距離であの巨人からエレンを隠せ。馬は任せたぞ。いいな?」

そう言ってリヴァイ兵長は立体機動に移り移動した。

「まさか...あの巨人を...生け捕りに...!?」


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