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バタン、とけたたましい音を立てて扉が開かれた。

「......リヴァイ、ハンジではないのだからせめてノックくらいして...おや」

「......こいつであってるんだろうな」

リヴァイはズカズカとエルヴィンの部屋に入室した。横抱きにしている少女を連れて。

「ああ、合っている」

「なあ、エルヴィン!......おや?リヴァイ、その腕の中にいる子...もしかして、その子が例の...?

というか、その子傷だらけじゃないか!連れてこいと命令されたかもしれないが、何もここまで...それとも......リヴァイの趣味かい?」

「うるせぇクソメガネ削ぐぞ。

こいつの仲間がゴロツキの一派に殺された。おそらく目当てはこいつだったんだろうが。

...その時にクソ野郎共をこいつが1人で殺して出来た傷だ」

「...こんな女の子1人に倒せるものかい?

まだ10歳くらいの子供に?」

「知るか。俺が着いた時にはもうゴロツキ共は死んでたんだよ。俺にだって見境なく敵意を剥き出しに襲ってきた」

「......そんなことが有り得るのか...?

...それにしても、この子、本当に東洋人かい?私の知っている東洋人とは少し違う気がするけど...?

東洋人ってもっと髪が真っ黒なイメージがあったよ。この子、黒髪というより灰色だからね」

「あ?」

リヴァイは手元で未だに目を覚まさず寝ている少女に目をやる。

...地下に居た時は薄暗くて気が付かなかったが、確かに髪が黒いというよりは灰色だな。

「さっき、リヴァイはこの子が1人でゴロツキを倒したと言ったな。そして、ハンジは信じられない、と」

エルヴィンは顔の前で手を交差し、2人の顔を見てやけに真面目な声のトーンでそう言った。

「あぁ?」

「それがどうしたんだい?」

リヴァイとハンジはその言葉の意味が上手く飲み込めず聞き返す。エルヴィンの返答を待って。

「2人に隠していたことがある。

この子は確かに東洋人だ。正確には、東洋人の血が濃く流れている。
しかし、この子は作られた人間だ。戦うために、人間兵器として」

「あぁ?どういうことだ」

「......そうだな。品種改良、という言葉が簡潔に言うならいいだろう。
...壁ができる以前から、彼女の祖先である種族は存在していた。彼らは高い知能と強さを持つ。彼らの種族の中で行われていたのは、より強い人間を作るために強い人間と強い人間を交配させることだ。

より強くなり、生き延びるために。しかし、彼らの種族は次第に数を減らしてった。巨人の出現によってな。

そして最後の生き残りが、彼女、ナマエだ。
彼女の種族による、最後の希望と最後の実験体。彼らが辿り着いたのは他種族との掛け合わせだ。彼女の母は東洋人、父は種族最後の希望を産まれてくる子に託した。そうして彼らの間に彼女が出来た。成功例としてな。

彼女は規格外の強さを持ってしまった。そして異質な見た目も。それを聞きつけた人間が彼女の両親を殺し、盗み出し売ったんだよ。赤子の時に。

......どうやら、彼女は自身の能力に気付いていない。しかし、今回の件で彼女の力は発現し、それを自分でも制御できなかったんだろうな」

「......こいつを、どうするんだ」

「彼女はしばらく地下牢に閉じ込める。彼女自身が制御出来ない力を我々が抑えることなど出来ないだろうからな」

「こいつにはもう敵意も戦意もねえよ。そんなやつをまた自由を奪って閉じ込めんのか」

「なんだ、リヴァイ。珍しく情でも移ったか」

「うるせぇ。何でも閉じ込めるって発想が気に入らねえだけだ。こいつは俺が躾る。力が抑えられねぇなら、俺がこいつの骨を折ってでも何でも力でねじ伏せる」

「あはは!リヴァイが子守りをするなんて、おもしろそうじゃないか!

リヴァイに預けてもいいんじゃないか?エルヴィン」

「......しょうがないな。上には伝えておく。くれぐれも目を離すなよ、リヴァイ」

「ああ?誰に言ってるつもりだ」

先程とは違い、パタンと扉が閉じ部屋にはエルヴィンとハンジだけが残された。

「珍しいね、リヴァイが誰かに情を入れるなんて」

「ああ。過去の自分にでも重ねているのかもな。あの二人の境遇はどこか似ている。

......ハンジ、リヴァイの元へ行ってナマエの手当を手伝ってやってくれないか」

「ははは、了解」

ヒラヒラと手を振ってハンジはエルヴィンの部屋から退室した。

「まぁ、リヴァイなら彼女を任せても大丈夫だろう」

端からそのつもりだった、とポツリとエルヴィンは独り言を漏らした。


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