13
そしてその1ヶ月後、ついに新兵も混じえた壁外調査が始まろうとしていた。
「開門始め!!第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
...この作戦は、また多くの人の命を落とすかもしれない。けれど、エルヴィンを信じよう。
「長距離索敵陣形!!展開!!」
エルヴィンの合図で一斉に広がりそれぞれの配置へとつく。わたしたちは5列中央で待機。エレンを守る形で配列する。
しばらく進むと進路変更である緑の信煙弾が打ち上げられた。
「オルオ、お前が撃て」
「了解です!」
今はまだこちらには巨人は現れていない。でもきっと...。
するとわたしたちに並走する形で伝達役の兵士がやって来た。
「口頭伝達です!
右翼索敵壊滅的打撃!右翼索敵1部機能せず!!
以上の伝達を左に回してください!!」
「聞いたかペトラ、行け」
「はい!」
次の瞬間、黒の煙弾が打ち上げられた。つまり、奇行種が出たということ。
「エレン、お前が撃て」
「はい!」
「何てザマだ...」
「...かなり陣形の深いところまで侵入されたね」
「あぁ...」
奇行種はかなり近いところまで来ている。けれど、わたしたちはこのまま作戦に従い進む、進まなければいけない。
だって、敵は巨人だけじゃないのだから。
****
「兵長!リヴァイ兵長!!」
「.....なんだ」
「何だって.....ここは森ですよ!?
中列だけこんな森の中に入ってたら巨人の接近に気付けません!
右から何か来てるみたいですし...。どうやって巨人を回避したり荷馬車班を守ったりするんですか?」
俺達は進み続けると森へとぶつかった。このままでは、何が起きても気が付くことが出来ない。
「わかりきったことをピーピー喚くな。もうそんなことできるわけねぇだろ...」
「え!?」
「な!?
...なぜ、そんな.....」
「周りをよく見ろ」
リヴァイ兵長に言われた通り周りを確認する。
「この無駄にクソデカい木を...。
立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。
そして考えろ。お前のその大したことのない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ」
そうか。俺が新兵だから今の状況を呑み込めていないだけで、簡単に答えを教えて貰えないのも自分で学ぶ必要があるからか...。
きっと先輩達もそうして戦いを学んできただろう、そう思い周りに目をやるとオルオさんが独り言を呟いているのに気が付く。
そこで改めて先輩達の顔を見ると、酷く困惑していた。
...まさか...まさか誰も...この状況を理解出来て居ないのか...!?
もしかしたら、リヴァイ兵長やナマエさんでさえも...。
前を行く2人の表情は伺えない。だが、誰もこの状況を理解していないのかもしれない。
その時、辺りに轟音が響く。その音は後ろから迫ってきているようだった。
「な.....何の音...!?」
「すぐ後ろからだ!!」
「右から来ていたという何かのせいか...?」
エルドさんがそう呟いた。
すると、前にいるナマエさんが何も言わずブレードを抜く。
そしてリヴァイ兵長が口を開いた。
「お前ら、剣を抜け。
それが姿を現すとしたら
一瞬だ」