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そんなことがあった後日、また俺達は延期された庭掃除へと戻った。何をしようかと歩いているとナマエさんが雑草を抜いているのが目につく。

1人でやるには中々に草原のようになっていたので大変だろうと声をかけた。

「ナマエさん、手伝います」

「あっ、エレン!ありがとう!一緒に雑草抜きしよう」

ブチブチと特に会話もすることなく雑草を抜く。ちらりとナマエさんの方を見るとところどころ土で汚れていて、結構前からこの作業を繰り返していたんだろう。

しばらく無言のまま雑草を抜き続けて辺りはほとんど雑草が目立たなくなった。

「だいぶキレイになったね!」

「そうですね」

「あ、エレン。その...色々あったけど、大丈夫?
何かあったら、遠慮なく言ってね」

色々あったというのは、昨日のことだろう。いつも通りに振る舞っているようで、気を使ってくれていたことに気が付く。

「あ...はい、大丈夫です。皆さんああ言って下さいましたし。あ...」

「うん?」

ナマエさんの方を見て話していると、蝶がひらひらとナマエさんの頭の上に止まった。一方で本人はそれに気付いていなかった。

「ナマエさん、蝶が.....」

止まっている蝶にゆっくりと手を伸ばす。

「おいナマエ」

「リヴァイ!」

ナマエさんがくるりと振り返った反動で止まっていた蝶も再び羽を広げて飛んでいった。
ナマエさんは立ち上がり、リヴァイ兵長の元へ駆けより、どうしたの?と聞く。兵長はナマエさんを見つめてから俺へと視線を向けた。しかしまたすぐにナマエさんへと視線を戻す。

「...雑草を抜くだけでどうしてそんなに顔が汚くなる」

「えっ、そんなに汚い!?」

「汚ぇ」

兵長は手でナマエさんの顔についた土を優しく払う。リヴァイ兵長は潔癖症、ということがここ数日でわかったので自分が汚れることも気にせずナマエさんにそういうことをするのは、やはりペトラさんが言ったように兵長にとってナマエさんが特別だからなのだろうか。

その行為にナマエさんは至極嬉しそうに顔を綻ばせていた。そのやり取りを終えると兵長は今度はちゃんと俺を見て声をかける。

「エレン、お前は引き続きここの清掃をしてろ。ナマエはここより奥でまだ片付いてない場所があるからそこを清掃しろ」

「わかりました!」

「そうなんだ、わかった!エレン、雑草抜き手伝ってくれてありがとう!」

「あ、いえ!」

****

「あ、いたいた、エレン」

「ペトラさん?」

「もう少しで休憩の時間だし、ナマエさんを呼んできてくれる?そろそろ兵長がナマエさんを探し出すと思うから」

探し出すってそんな大袈裟な。兵長が指示した場所にいるだろうから大丈夫だろうと思ったが、ペトラさんがそう言ったので頷く。

「ナマエさん、迷子になったりするんですか?」

「ううん。そうじゃなくてね、ナマエさん小さいでしょ?前に1度、同じ場所にはいたんだけどちょうど建物に隠れる形になっちゃって見つからなくてリヴァイ兵長が結構焦ってナマエさんがいないって言ったことがあって。それ以来、時間になったら兵長がナマエさんを探し出すからその前に私達がナマエさんを連れて戻すようになったの」

兵長が焦っている場面があまり想像できないが、確かにナマエさんは小さいから見つからないと何かあったのか心配になるだろう。

そういうことで俺はナマエさんを探しているのだが、リヴァイ兵長が指示した場所を知らないためナマエさんがどこにいるかわからない。奥って.....どこだ。

しばらく歩いているとナマエさんが目を閉じて、木に凭れて座っていた。遠くからナマエさんの姿が確認できたので声をかけようと口を開いた時、リヴァイ兵長がナマエさんの元へやって来た。

なんだ、リヴァイ兵長が結局探しに来たのか、と思い立ち去ろうとしたが何故だか目が離せなかった。今までは誰かしらといたが、今は2人だけの空間のようで。

兵長は座って目を閉じているナマエさんと同じ目線より少し上から見下ろすようにしゃがみ込んだ。

そしてゆっくりと兵長はナマエさんへと顔を近づけて行く。けれどナマエさんの目が開くことは無い。

何故かこの行動に目を奪われ、心臓がやけに早く拍動する。これは.....これはまるで。

はらりと兵長の前髪がナマエさんの顔に影を作り、2人の距離がゼロになろうとする。何か見てはいけないようなモノを見ているような気がして、だが目を離すことが出来ない。

その瞬間、ぱちり、とナマエさんの目が開かれ満面の笑みを浮かべる。

「ばれてた?」

「バレバレだ。寝たフリするぐらいならさっさと戻って来い」

「リヴァイ来てくれるって思ってたから!」

「俺が来る前に戻って来いと言っている」

そしてナマエさんは何食わぬ顔で兵長手を掴み立たせてもらう形で立ち上がり、歩き出す。

えっ、何だあれ。2人共、全然普通だけど俺がズレてるのか?

「エレン.....みーたーなー」

「ウワッ!!ペ、ペトラさん.....!!」

「あはは、ごめんごめん。エレンにお願いした後、すぐにリヴァイ兵長が、俺が行くって言ったから呼び戻そうと思ったらエレン棒立ちしてて目線の先にあの2人がいたから、ついに見たのかなって。

とりあえず、戻ろう!」

「は.....はい.....」

ナマエさんと兵長のだけでも心臓に悪いが、ペトラさんのも中々に心臓に悪いと思った。


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