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拠点内の掃除は一通り終わった。けれど、まだまだお城は広いから掃除はしばらく続きそうだ。
そして夜、わたしたちは食事をすませて食後のティータイムをしている。

「我々への待機命令はあと数日は続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えてると聞いた。

それも今期卒業の新兵を早々に混じえると」

エルドがそう言った。そのことに関しては一応わたしの耳にも入っている。

「ずいぶん急な話じゃないか。
ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵には堪えただろうによ」
「ガキ共はすっかり腰を抜かしただろうな」

グンタとオルオがそう言った。確かにあの襲撃で104期生は多くの仲間を失って、巨人に対する恐怖心は大きいと思う。

「本当ですか、兵長?」

「作戦立案は俺の担当じゃない。

ヤツのことだ...俺達よりずっと多くのことを考えてるだろう」

リヴァイの言うヤツとはエルヴィンのことだ。リヴァイの言うことはその通りで、エルヴィンはいつだってわたしたちよりずっと色んなことを考えてるし、正解に導いてくれる。

「確かに...これまでとは状況が異なりますからね...。
多大な犠牲を払って進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば、突然まったく別の希望が降って湧いた」

エルドがそう言った後、みんなの視線はエレンへと向けられる。

「未だに信じられないんだが...。巨人になるっていうのはどういうことなんだ、エレン?

ナマエさんも...エレンが巨人になったところを見たんですよね?」

黙って聞いていたので急にエルドに名前を呼ばれてびっくりする。

「えっ、あぁ...うん...」

「...その時の記憶は定かではないんですが...。
とにかく無我夢中で.....。でもきっかけになるのは自傷行為です。

こうやって手を.....」

エレンはそう言って口元へと手を近づけた。

「お前らも知ってるだろ...。報告書以上の話は聞き出せねぇよ...。

まぁ、あいつは黙ってないだろうが。
ヘタにいじくり回されて死ぬかもなお前.....エレンよ」

「え.....?あいつとは...?」

その時ガチャ、と扉が開かれた。

「こんばんはー。リヴァイ班の皆さん。
お城の住み心地はどうかな?

あ!ナマエちゃんじゃないか!!今日もかわいいね!!」

「え、あ、ありがとう.....?」

ぎゅむ、とハンジに抱きしめられて、危うくティーカップを落としそうになった。このハンジの行動は恒例行事となりつつある。

「あいつだ」

「ハンジ分隊長」

「私は今、街で捕らえた2体の巨人の生態調査を担当しているんだけど、明日の実験にはエレンにも協力してもらいたい。

その許可をもらいに来た」

「実験...ですか?俺が何を.....?」

「それはもう.....最高に滾るヤツをだよ」

息の荒いハンジを見る限りあまりいい予感はしない。わたしにはエレンの無事を祈ることしかできない。

「あの...許可については自分では下せません。自分の権限を持っているのは自分ではないので」

エレンがそう言うとハンジはリヴァイの方へ向く。

「リヴァイ?明日のエレンの予定は?

あと、ナマエちゃんもできれば一緒に.....」

「わ、わたしも?」

「.....庭の掃除だ。

ナマエは.....駄目だ」

ハンジの実験は結構危険なことが多いから仕方ないことだと思う。そしてきっと、明日のお庭掃除は後日になるだろうなぁ...。

「ナマエちゃんにも手伝ってもらいたかったんだけど...。

まぁ、とりあえず決定だ!!エレン明日はよろしく!!」

ハンジがエレンの手を取り握る。

「あ.....はい.....。
しかし巨人の実験とはどういうものですか?」

エレンの発言にオルオが肘で押したのを確認できた。今のオルオの判断は正しいと思う。だってこれは、またハンジの長話が始まってしまうから。

「あぁ.....やっぱり。聞きたそうな顔してると思った...」

ダメだ。もう完全にスイッチが入ってしまった。

その瞬間みんなは席を立ち退出していく。
わたしもリヴァイに引きずられる形で退出していく形になった。

「リ、リヴァイ。エレンは.....」

「.....あいつはいい」

「あ.....うん...」

エレン、朝になってしまうかもしれないけれど頑張れ。

****

「エレン.....大丈夫かな...」

「ああなったらもうどうしようもならん。
そもそもあいつに質問したのはエレンだ」

「た、確かに.....」

リヴァイに引きずられてあの場を抜け出し、わたしたちは部屋に戻った。本当はわたしにも部屋はもらえるんだけど、なんとなく落ち着かないので以前と同じようにリヴァイと一緒ということになった。

壁外調査が30日もすれば待っているのは事実だけれど、久しぶりにゆっくりリヴァイやみんなと過ごせた気分だ。

「こんな日がずっと続けばいいのになぁ...」

「.....そうだな」

机を挟み向かい合わせになる形でわたしたちは座りながらそんな会話をする。リヴァイは書類に目を向けているけれど。そんな光景もなんだか日常に戻った感じがして、嬉しくなる。

「あ!ねぇ、明日のハンジの実験、わたし本当に手伝っちゃダメ?」

「.......。

.....俺も協力しろってことか...?」

「だってリヴァイはわたし1人だったら絶対ダメって言うでしょ?だから一緒にお手伝いしようよー。

エレンに何かあっても困るし.....」

書類から目を上げリヴァイはしばらく黙り込む。きっと、わたしの言っていることも一理あると思っているんだろう。

「.....庭掃除は後日やる」

「.....!

リヴァイ、ありがとうっ!!」


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