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旧調査兵団本部、そこに俺と調査兵団特別作戦班、通称"リヴァイ班"は身を置くことになった。
「乗馬中にべらべら喋ってれば舌も噛むよ」
「.....最初が肝心だ.....。あの新兵、ビビっていやがったぜ」
「オルオがあんまりマヌケだからびっくりしたんだと思うよ」
「.....何にせよ俺の思惑通りだな」
「...ねぇ、昔はそんな喋り方じゃなかったよね?」
「.....だよね、ペトラ」
「あっ、ナマエさん!」
ジトリとオルオさんを見るナマエさんの目はあまり今まで見たことの無い表情だった。
「わたしがオルオと会った時は、そんな喋り方じゃなかったし.....ソレもなかった」
ナマエさんが指をさしたのはオルオさんの胸元のスカーフだ。
「ねぇ...オルオ.....。
もし.....それが仮にもし.....リヴァイ兵長のマネしてるつもりなら.....本当に.....やめてくれない?
いや...まったく共通点とかは感じられないけど.....」
「フッ.....俺を束縛するつもりか、ペトラ?俺の女房を気取るにはまだ必要な手順をこなしてないぜ?」
「兵長に指名されたからって浮かれすぎじゃない?...舌を噛み切って死ねばよかったのに...。
それより先にナマエさんに殺されるかもね」
「殺さないよ、だってリヴァイはリヴァイだもん。オルオとリヴァイは別人だからね!」
「ナマエさん.....どういうことっすか...」
皆、リヴァイ兵長に指名されたのか...。
俺が巨人の力を行使した際の抑止力。俺が暴走した時は...この人達に殺されることになる。
「久しく使われてなかったので少々荒れてますね」
「それは重大な問題だ.....。
早急に取り掛かるぞ」
****
「上の階の清掃完了しました。
俺はこの施設のどこで寝るべきでしょうか?」
「お前の部屋は地下室だ」
「また...地下室ですか?」
「当然だ.....。お前は自分自身を掌握できてない。お前が寝ボケて巨人になったとしても、そこが地下ならその場で拘束できる。
これはお前の身柄を手にする際提示された条件の1つ。守るべきルールだ」
リヴァイ兵長の言葉に俺はただ何も言えず立ち尽くす。
「お前が掃除した部屋を見てくる。ここをやれ」
「はい.....」
「失望したって顔だね」
突然声がかかり驚きの声を出すと、ペトラさんがいた。
「珍しい反応じゃないよ。
世間の言うような完全無欠の英雄には見えないでしょ?現物のリヴァイ兵長は.....。
思いの外小柄だし、神経質で粗暴で近寄りがたい」
「いえ.....俺が意外だと思ったのは...。
上の取り決めに対する従順な姿勢です」
「強力な実力者だから序列や型にははまらないような人だと?」
ペトラさんの言葉に俺は頷く。
「はい.....。
誰の指図も意に介さない人だと.....」
「私も詳しくは知らないけど...以前はそのイメージに近い人だったのかもね。
リヴァイ兵長は調査兵団に入る前...都の地下街で有名なゴロツキだったって聞いたわ。
そして何があったか知らないけど、エルヴィン団長の元に下る形で調査兵団に連れてこられたと」
「団長に!?」
「おい...エレン.....」
噂をすればなんとやらで、俺もペトラさんも兵長が近付いていたことに気が付けず声をかけられ驚く。
見るとペトラさんは素早く自分の仕事をしているかのように動いていた。
「は...はい!!」
「全然なってない。すべてやり直せ」