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エルヴィン団長が話をつけてみると言ってくれた日から何日が経っただろうか。一生ここでこのままではないか、と嫌な予感が過ぎる。
その時、扉の開く音ともに2人、調査兵団がやって来てやっとここから出られそうだと言った。
「私は調査兵団で分隊長をやってるハンジ・ゾエ。
そっちの彼は...」
「あ...あの...」
歩いている俺の後ろでやたらと匂いを嗅いでくる人がいる。
「彼も同じ分隊長のミケ・ザカリアス。
そうやって初対面の人の匂いを嗅いでは...鼻で笑うクセがある。
多分深い意味は無いと思うね。まぁこんなのでも分隊長を務めるほどの実力者ではあるんだ...」
そういった直後、あ!と大きな声を出した。
「ごめん...無駄話しすぎた。
もう着いちゃったけど.....大丈夫!むしろ説明なんか無い方がいい」
「え?」
「エレンが思ってることをそのまま言えばいいよ。
勝手だけど私達は.....君を盲信するしかないんだ」
開かれた扉の奥へと進むよう促される。
そこは審議所だった。
...俺は審議所の地下牢にずっといたのか...。
ひざまずけ、と言われた場所で言われた通りにする。そして目線だけを動かし、周囲を伺った。
憲兵団のトップ。ピクシス司令に、エルヴィン団長、リヴァイ兵長、ナマエさんもいる。
そしてそこにはミカサとアルミンの姿もあった。
「さぁ...始めようか」
3つの兵団のトップであるダリス・ザックレー総統が口を開いた。彼は俺にいくつか確認をし、そして俺はそれに頷く。
そういえばこれは...一体何を裁くんだ?
「異例の事態だ。通常の法が適用されない兵法会議とする。決定権は全て私に委ねられている。
.....君の生死も...今一度改めてさせていただく。
異論はあるかね?」
「ありません!」
今回の審議は、俺の動向を憲兵団か調査兵団のどちらに委ねるかを決めるものだという。
まずは憲兵団からの案を話すよう総統は促した。
「我々は.....
エレンの人体を徹底的に調べあげた後、速やかに処分すべきと考えております。
彼の存在を肯定することの実害の大きさを考慮した結果、この結論に至りました」
その後も話は続き、中央の有力者達は俺を脅威として認識しているが民衆は俺を英雄視しており、この領土を巡る内乱が生じかねない状況である、と言った。
俺を英雄視するという発言に、世間の状況がわからない。
「彼は高度に政治的な存在になりすぎました。なのでせめて、出来る限りの情報を残してもらった後に我々人類の英霊となっていただきます」
「そんな必要は無い。
ヤツは神の英知である壁を欺き侵入した害虫だ。今すぐに殺すべきだ」
そう言ったのは確か、5年前から急に支持を集めだした宗教、とか言う組織の人間だ。
総統は彼に静粛にするよう言った後、調査兵団へと声をかけた。
「我々調査兵団はエレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用しウォール・マリアを奪還します。以上です」
その後も話は進み、保守派の立場は扉を完全に封鎖すべきだと言った。しかしそこで総統にニック司祭と呼ばれた人は壁に人間風情が手を加えるな、と言う。
そして次は俺の質問へと移った。総統は俺に巨人の力を行使できるのか、と聞く。
「は...はい。できます!」
だが総統は奪還作戦の報告書には、俺が巨人化した直後、ミカサ目掛けて拳を振ったと言った。その行動の記憶が全くない俺は困惑する。
「君がミカサか。エレンが襲いかかったのは事実か?」
「.....はい。事実です...」
俺が...ミカサを殺そうとした?
俺がか...?
「しかし...それ以前に私は2度、巨人化したエレンに命を救われました。
1度目はまさに私が巨人の手に落ちる寸前、巨人に立ちはだかり私を守ってくれました。
2度目は私とアルミンを榴弾から守ってくれました。
これらの事実も考慮していただきたいと思います」
ミカサの発言にも関わらず、流れは俺たちの過去へと登っていく。9歳で大人3人を刺殺した。そこには根本的な人間性に疑問を感じる、と。
そして人々の懐疑の目は俺だけでなく、ミカサにも向けられる。
「違う!!い...いや...違います...。
俺は化け物かもしれませんが、ミカサは関係ありません。無関係です。
それに...そうやって自分に都合の良い憶測ばかりで話を進めたって...現実と乖離するだけでろくなことにならない.....」
...ま...まずいか?これ以上は黙った方が...。
「大体あなた方は...巨人を見たことも無いクセに何がそんなに怖いんですか?」
...いや...言ってやる...。思ったこと全部...。
「力を持ってる人が戦わなくてどうするんですか。
生きる為に戦うのが怖いって言うなら力を貸して下さいよ.....」
...この腰抜け共に.......。
「この.....腰抜け共め.....
いいから黙って全部俺に投資しろ!!!」