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調査兵団が帰ってきてくれたおかげで、巨人の殲滅には予定よりずっと時間を要さなかったらしい。

あの後、エレンの身柄は拘束され、ミカサやアルミン、その他現場を目撃した人たちには情報が公になるまでは守秘義務を課せられた。

そして最悪な形ではあったけれど、わたしはようやく調査兵団本部へと戻ることになった。

「ナマエちゃぁああああん!!!おかえりー!!
帰ってきてくれないから、私は寂しかったよぉおおお!!

あぁっ!ナマエちゃんの可愛い顔にケガが...!!他は!?大丈夫なのかい!?」

「ハ、ハンジ.....」

「おいクソメガネ落ち着け。そして手を離せ。ナマエが窒息死する」

たぶんわたしは今潰れたカエルみたいになっている気がする。本部に戻った途端、ハンジがものすごい勢いでわたしを抱きしめてきたのだ。抱きつかれた時、ぐぇ、と本当にカエルみたいな声が出た。

リヴァイがそう言ってくれたおかげでハンジはわたしから離れる。ようやくきちんと酸素を吸えるようになったので肩で息をした。

「ハンジ...ただいま」

ハンジはまたわたしに抱きつこうとして来たので、ひ、と小さく声を漏らすとリヴァイがわたしの腕をつかみ後ろに引く。すぽりとわたしの体がリヴァイの腕の中に収まりどうにか事なきを得る。

「リヴァイ...ありがとう...」

「ナマエ。これからエルヴィンの元へ報告をしに行く。あったことを全て伝えろ」

その言葉にハッとし、今までのことを思い出す。

「.....わかった」

****

わたしはエルヴィンに見たこと、起きたことを全て伝えた。超大型巨人が現われ、扉に穴が開けられたこと。エレンが巨人から出てきたことや、1度エレンは自分を忘れたかのようにミカサに攻撃をしてきたこと。アルミンがエレンに必死に話しかけ、エレンは意識を取り戻して岩で穴を塞いだこと。そして多くの兵士の命を犠牲にして、作戦が成功したことを伝えた。

「ナマエ、報告感謝する。そしてご苦労だった。
君の活躍は聞いたよ。君がいなければもっと被害が拡大していた、と」

「わたしだけの力じゃない。
みんな...必死に戦ってくれた。
だから、どうか.....どうか、その戦果を報われる形にして欲しい。エレンを.....」

その言葉にエルヴィンは頷く。

「もちろん、彼の身柄を憲兵団に渡すつもりは無い。彼の力は我々に必要だ」

「エルヴィン、ありがとう...」

「礼には及ばない。

あぁ、そうだ。ナマエ、よく帰ってきてくれた」

その言葉に目頭が熱くなるのを感じた。

「.....うん...!」

****

「ここに戻ってくるの、久しぶり...」

「だろうな。
まぁ、ゆっくり休んでる暇もねぇだろうが...」

3年ぶりにリヴァイの部屋の部屋へと戻ってこられた。部屋は3年前と配置などは同じで、相変わらず綺麗だった。

とりあえず、戦いで血や土などで汚れた体をシャワーを浴びて流す。シャワーを浴び終え、頭にタオルを被ったまま部屋へと戻ると、昔のようにリヴァイはわたしの髪をタオルで拭いてくれる。

「.....訓練兵といた時にもこうやって過ごしてたのか」

「えっ?ううん!」

同じ目線のリヴァイがジトリと眉間にシワを寄せて見てくる。

「.....なぜ俺の前だとそうなる」

「リヴァイだから?」

「おい、どういうことだ.....」

「だって、指導員として行く前に、わたしそう言ったから!」

そう言うとリヴァイは目を丸くして、は、と笑った。そして頭にタオルをのせたままリヴァイはわたしの髪をわしゃわしゃと撫でた。

「...そうだったな。

もうちっとデカくなって帰ってくるかと思ったが...あまり変わらねぇな」

「う.....。
ちょ、ちょっとは伸びたもん...2cmくらい...。

そ、それに、身長は変わらなくても、兵士としては成長したと思う!!」

リヴァイはわたしの頬に手を伸ばし、戦いでできてしまったかすり傷を優しくなぞった。

「そうだな...。

ナマエ。よく、あの状況を乗り切った。
ここに戻ってきてからも、ずっと張り詰めてたんだろ」

リヴァイの優しい声色に、張り詰めていた糸が緩み出す。糸はまるで、せき止めていた水を一気に流すかのように溢れ出し、わたしの目から流れる。

「.....っ、うん。
やっぱり、強くなっても...命を失っていくのは辛かった.....。

わたし...心はまだまだ弱いの...。
何かを守るために、何かを捨てる覚悟が...ちゃんとできない...っ。でもわたし、副兵士長だから...。わたしか不安になったら、みんなも不安になるってわかってるから...、強いフリをしてた...の...ッ」

向こうにいた時は泣くことなんてなかったのに、どうしてかリヴァイの前だとわたしは泣き虫になってしまう。

でもリヴァイはそんなわたしの話を何も言わずに聞いてくれる。

「そうか.....。

.....ナマエ、おかえり」

リヴァイが優しくわたしの後頭部に手を回して、リヴァイの肩へと顔をひきよせる。久しぶりのリヴァイの温もりをきちんと感じられて、余計に涙がボロボロと零れる。

「.....ただいま...っ」

やっぱり、わたしはリヴァイの前だと泣き虫だ。


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