5
「そうか...。
その地下室に行けば全てがわかると...」
「はい...。
.....信じてもらえますか?」
わたしたちは壁上へ移動し、エレンに何があったのかについて話していた。
「お主自身が確証を得られん以上は、とりあえず頭に入れておくといったところかの...。
しかし...まぁ、ナマエに頼まれたというのもあるが、物事の真意を見極める程度のことはできるつもりじゃ。お主らの命はワシが保証しよう」
その言葉にわたしはほっと息を漏らした。
そしてピクシスはアルミンを呼び、巨人の力を使ってトロスト区を奪還することができる、と言ったことの真意を聞く。本当にそう思ったのか、それとも命乞いだったのか。
するとアルミンは両方です、と答えた。
「あの時僕が言おうとしたことは、巨人になったエレンが破壊された扉まであの大岩を運んで扉を塞ぐということでした」
アルミンはエレンの力で現状を打開できる可能性を感じて欲しかった、と言った。するとピクシスは地面に膝をついたままのエレンに目線を合わせ、エレン訓練兵よ、と呼ぶ。
「穴を塞ぐことができるのか?」
「.......塞いでみせます!何があっても.....!」
エレンがそう言ったのを確認するとピクシスは参謀を呼び、作戦を立てると言った。その発言にアルミンは戸惑う。けれど、それ以前に根本的な問題があるのだ。
「敵は巨人だけじゃない.....」
****
ピクシスとエレンが混乱した兵士たちに向けて話している間、わたしたちはアルミンの作戦を聞く。
巨人の特性を利用して、壁際におびき寄せ集めれば大部分は巨人をエレンから遠ざけることができる。倒すのは大砲を利用すれば損害を出さずにできる、というものだ。ただしエレンを無防備にはできないので少数精鋭の班で彼を守る。また、穴から入ってくる巨人との戦闘も避けられない、と言った。
作戦を伝えたあと、アルミンは確証が乏しいのにこの作戦を実行することに疑問を感じる、と言った。
「たぶん、ピクシスは...現状の問題を理解してるんだと思う」
「ナマエ副兵士長の言う通りだ。
1つは時間の問題。今現在も街に巨人が入り続けている。
そしてもう1つ、人が恐怖を原動力にして進むには限界がある...」
ピクシスの説得が終わり、作戦を実行へ移す時が来た。
「エレン...体は大丈夫...!?」
「あぁ...囲まれてた時よりだいぶマシだ...」
わたしたちはエレンを優先して守ることが役割。岩へ近づいているけれど、巨人がいないのはみんなが囮をやっていてくれているからだろう。
「エレン、頑張って...!」
「はい...!」
そして岩への最短ルート地点へ到着する。
「ここだ!!行くぞ!!」
わたしたちは一斉に立体機動へと移る。どうか、この作戦がうまくいくようにそう願った。
その時、眩しいほどの光の後、巨人が出てくる。エレンが巨人になった。
わたしたちはそれぞれ分散し屋根からエレンの援護をするため配置につく。そしてエレンは岩へと向かって行く。しかし、その歩みは止まり、エレンはミカサへと目を向ける。
その瞬間嫌な予感がし、咄嗟に叫んだ。
「ミカサ!!!」
エレンはミカサ目掛けて拳を振り下ろしたのだ。
なんで。前回巨人になっていた時は、人間を狙うことはなかった。どうにか避けたミカサの元へと移動する。
「ミカサ、大丈夫!?」
「.....ッはい。でも、.....エレンが.....ッ!」
エレンはわたしたちが会話をする暇を与えてくれない。岩には目もくれず、わたしたちへと攻撃を仕掛けてくる。
「エレン!!わたしたちは何のためにここに来たの!?」
「エレン!!私はミカサ!!あなたはこの岩で穴を塞がなくてはならない!
エレン、あなたは人間!!」
ミカサがエレンの顔の前でそう叫んだ時、エレンは自らの顔へと拳を振り下ろした。衝撃でエレンの顔は飛び、後ろへと倒れる。
作戦は失敗したと赤い煙弾が打ち上げられた。混乱した現場。そして、後方に巨人が現れ始めてしまう。ある班は壁を登ると言い出した。その発言にミカサは刃を構える。
「ミカサ、待って!落ち着いて!」
わたしはミカサの腕を引き、その場にとどまらせる。
「待て!!
リコ班!後方の12m級をやれ!ミタビ班と俺の班で前の2体をやる!
エレンを無防備な状態のまま置いては行けない!」
イアンはエレンを回収するまで彼を巨人から守る作戦へと変える、と言った。
リコはその作戦に対し反論をしたけれどイアンは、エレンに、よくわからない人間兵器とやらに、命を投げ打ち健気に尽くすことしかないと言った。
「わたしは.....やるしかないと思う。
この賭けに負けるとか、そんなのはわからないけど...でもわたしたちに出来ることは戦うこと。
みんなが戦わなくても、わたしはやる」
「ナマエ副兵士長.....」
そしてリコは作戦に従う、と言った。そして作戦を変え、ふたたびわたしたちは刃を構える。
「13m級1体!!建物を横断してエレンに向かって接近しています!!」
「わたしが食い止める!」
エレンに近付いてきた巨人を倒す。しかし次々と巨人が侵入して来た、と報告が入る。
なんで巨人がこっちに向かってくるの...?
まさか、エレンに引き寄せられてる...!?
やって来る巨人を倒しているその時、突然断末魔のような叫び声が耳に入った。
驚いて振り向くと、叫び声はエレンからで、アルミンがエレンのうなじ辺りを刺していた。