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エレンが巨人の中から出てきて数分経った。けれどエレンの目が覚めることはない。このままだと、このことを知った駐屯兵団の兵士たちが集まってきて、最悪の場合エレンが殺されてしまう。

人は、恐怖に囚われると言葉が通じなくなる。その前に。その前に、話の通じる人を呼ばなくちゃ。

エレンに声をかけているミカサとアルミンの名前を呼ぶ。

「わたし、ピクシス...ピクシス司令のところに行ってくる。
ピクシス司令ならきっと、話が通じる。このままだと、話の通じない兵士たちばかり集まってしまうから...この状況をどうにかしなくちゃいけない。

ミカサ、アルミン。どうか、エレンを護って。絶対に、最悪の事態になる前にわたしはピクシス司令のことを呼んでくるから」

「ナマエ...さん...?」

不安そうな顔をするアルミンの方へ向き直り言葉を続けた。

「アルミン。

わたしが戻ってくるまででいいから、それまでに何か考えていて欲しい。この状況を、エレンをどう守るか。

...アルミンなら、大丈夫。絶対できるから」

「ナマエさん、...お願いします」

ミカサがじっとわたしを見つめ静かに敬礼をする。それにわたしは薄く笑って急いでピクシス司令の元へ向かった。

****

「.....ッピクシス!!」

「おや、ナマエ。久しいのぅ。

エルヴィンに連れられて会話をした以来か?初めて会った時と呼び方は変わらないのう。
あの時はリヴァイの後ろに隠れて怯えたような顔をしていた子が、随分と兵士らしく凛として...そして美しくなったものだ。

これからもっと美しくなるだろうな...。楽しみじゃ」

焦った様子のわたしに対して、ピクシスはいつも通りの反応で。もしかすると、わざとなのかもしれないけれど。

「...ピクシス、お話があるの」

「それは、巨人から人間が出てきたという話かの」

「.....!

知ってたの!?」

「情報はもうすでにおおむね伝わっておる。

それで?ナマエは、ワシにどうして欲しいんじゃ?」

笑いながら話していたピクシスの表情がやけに真面目になる。

「今、あそこではきっと駐屯兵が集まってきてる。その人たちにわたしたちが何を言っても、きっと聞いてもらえない。

.....だから、ピクシスに来てほしいの。
きっとアルミンなら.....この現状を変えられる」

そう言うとピクシスはわたしに背を向け、そうじゃのぅ...とポツリと言った。そして再びわたしの方へ向き直る。

「可愛いナマエの頼みじゃ、行こう。現場がどうなっておるか知りたいのも事実じゃ」

「ありがとう!ピクシスっ!」

「ハッハッハ、その花の咲いたような笑顔はナマエの魅力じゃな。さて、行くとするかのぅ」

****

そしてエレンたちの元へついた時、そこにはやはりたくさんの兵士たちがいて彼らはエレンたちに銃口を向けていた。そして、アルミンが大声で発言し、敬礼をしている。

けれど攻撃態勢は解かれることがない。その時、ピクシスが制止した。

「お前にはあの者の見事な敬礼が見えんのか」
「ピクシス司令...!!」

「今着いたところだが、状況は早馬で伝わっておる。
お前は増援の指揮につけ」

「エレン!ミカサ!アルミン!!大丈夫!?」

「ナマエさん...!?」

急いで3人の元へ駆け寄る。どうにか間に合ったようだ。

「さて、ワシは.....あの者らの話を聞いた方がええ気がするのぅ」


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