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「...っつ!」
住民に近づく巨人たちを倒していく。近くには多くの巨人の死骸があった。けれどまだ撤退の鐘が鳴ることはない。
まだ、住民の避難が完了してない...!?
このままだとガスも刃もなくなってしまう。
焦りを覚えた瞬間、カンカンカン、と撤退の鐘が鳴り響いた。
「撤退だ!
ガスを補給しろ!壁を登るぞ!」
そう合図が出た時だった。
「前衛の撤退を支援してきます!!」
ミカサが1人で前衛部の方へ向かってしまう。
このままではミカサのガスや刃もなくなってしまう。そうなれば待ち受けるのは最悪の結果だ。
「.....わたしもミカサを追って...」
「ナマエ副兵士長、お待ちください!
貴方はここに残された唯一の調査兵団です!もし貴方に何かあったら...!」
向かおうとした時、そう声をかけられ動きが止まってしまう。わたしの勝手な行動で、何か最悪のことが起きてしまったら。
わたしだっていつガスがなくなるかわからない。無鉄砲に突っ込んで自分の身を滅ぼすだけになるかもしれない。
...いや、違う。わたしは、誰かを守るためにここにいるんだ。残された調査兵団として。ならば戦うしかない。
「...いえ、行きます。
みんなは早く撤退してください!わたしもミカサを追って前衛部の撤退支援をしてきます!」
「ナマエ副兵士長!」
立体機動に移り、急いでミカサを追う。しかし、さっきまでのやり取りでかなり時間を取られてしまった。どこにいるか、見つけられるだろうか。
ミカサを探していると、まだ残っていた巨人が現れた。
「急いでるのにっ...!」
素早く巨人にアンカーを刺し、うなじを削ぎ落とす。その時、遠くから声が聞こえた。
「こっち...!」
声のした方を頼りに移動する。すると、遠くに立体機動で移動する前衛部のみんなの姿が見えた。距離を詰めていくと、しだいに誰だか確認できるほど鮮明になっていく。
...あれは、アルミン!
「アルミン!!」
大声で呼ぶと、ハッとしたように彼はこちらを向いた。
「ナマエさん!?」
急いで彼らの元に近付く。
「無事でよかった...!!
...あ、れ。.....エレン、は?他にもトーマスも...いない人は...」
エレンの姿やほかの人の姿も見当たらないのでそう聞くと、アルミンは目線を下げ、顔をゆがめた。
「皆は.....っ」
「.....わかった。言わなくていいよ、アルミン。
今はこの状況を.....ミカサ!?」
アルミンに声をかけていた途中だった。ミカサが落ちていくのが目に入る。そして、2体の巨人の姿も。
「ガス切れだ...!アルミン、わたしはミカサの元に向かうから!」
「お、お願いしますナマエさん...!!」
間に合え、間に合え...!
ミカサとは距離が離れていたので、本当に時間の問題だ。
絶対に助ける...!
しかし巨人とミカサの距離はどんどん近くなっていく。間に合わない、絶望で息ができなくなりそうになった瞬間だった。
「.....!?」
ミカサの後方にいた巨人が巨人を殴った。
その光景に呆然としそうになる気持ちを抑え、真っ先にミカサの元へ向かう。
「ミカサ...ッ!!」
ミカサを抱きかかえ、屋根へと移動する。
「ミカサ、ケガは!?」
「わ、私は大丈夫です.....」
15m級が2体...。けれど、そのうち1体は...。
「.....伏せてッ!!」
わたしが声を出した瞬間、巨人の頭がこちらに飛んできた。そう、そのうち1体は巨人を殺してる...。
「奇行種...か!?
とにかく本部へ急ぐぞ、皆が戦ってる!!」
コニーがそう言うも、アルミンがミカサのガスがないことを伝えた。
「オイ.....マジかよ!?ナマエさんはいるけどよ!どうすんだ、オマエがいなくて!!」
「やることは決まってる!!」
アルミンはミカサとガスを交換すると言った。ミカサはそれを止めたけれど、これしかない、と言う。けれど、アルミンを置いてなんて行けない。
「わたしが、アルミンを抱えて移動する」
「ナマエさん!?無茶ですよ...!さすがにナマエさんでも...!」
「アルミンを置いてなんて行けるわけないよ!!
仮にもわたしは調査兵団なんだから!」
「アルミンは俺が抱えます!
お前をこんなところに残していくわけねぇだろ!!」
コニーがアルミンの腕を引く。そう、誰一人置いていかない。
「き...聞いてくれ!ナマエさんも聞いてください!
提案があるんだ!!
やるのは3人...です。だから、3人で決めてください.....。無茶だと思うけど...」
アルミンは本部を指さした。