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「ああ?」
「だから今説明しただろう。地下街で、探している人物がいる。きっと、彼女は我々の希望になる」
「俺は行かねえ」
「いや、行ってくれ、リヴァイ。これは命令だ。東洋人の女の子だ。未来の為には、力ずくでも何でも、彼女の能力が必要になる。
行ってくれ、リヴァイ」
「......チッ」
「これは彼女の資料だ」
渡された資料に軽く目を通しそいつの遍歴を確認した。詳しく書かれていないのはそいつがちゃんとした出生ではないからだろう。
「おい、資料だけ渡されてもこいつの顔がわからなければ意味が無い」
「彼女に関する情報はあまりにも少ない。今渡した、たった1枚の紙でまとめられてしまうほど彼女の遍歴はわからないんだ。
恐らく彼女は常に自身を狙われている立場にあることを自覚している。だからこそ、彼女の顔を知るものは少ない。
私が調べた限りでもこの情報で精一杯だ。
だが彼女の居場所には目星がついている。
今から伝えるからその場所を目指してくれ」
「.....それにしても。
随分とこのガキも不運な人生だな。
地下では東洋人というだけで狙われて、今度は理由もわからずに俺たちに狙われる。自分の人生なんてあったもんじゃねえ」
そう言うとエルヴィンは少し目を伏せて笑った。
「そうだな。きっと彼女は俺を憎むだろう。
理由もなく自分の出生を恨むだろうな。
自分の人生を生きたかったはずだ。せめて、彼女には選択肢を与えてやりたかったが...。
彼女には人類の希望がかかっている。それだけの価値があるんだよ、彼女には」
「俺にはこんな年端もいかないガキにそんな大層な価値があるとは思えねえが」
エルヴィンは真っ直ぐ俺を見る。
「俺の目は確かだよ」
そう一言言う。
そこまでエルヴィンに言わせる東洋人のガキに少しだけ興味が湧いた。
「地下へ行く際、リヴァイには数名と同伴してもらう」
「いらねえよ」
「いや、あくまでも保険だよ。何があるかわからない。
リヴァイ、よろしく頼む」