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そうして、気が付けばあっという間に3年が過ぎた。今日は104期生が訓練兵を卒業する日。
そしてこの中から訓練成績がよかった上位10名が発表される。
「首席、ミカサ・アッカーマン。
2番、ライナー・ブラウン、3番ベルトルト・フーバー」
アニ、エレン、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、クリスタの順番で上位10名が発表された。
そして訓練兵には駐屯兵団、わたしの所属している調査兵団、憲兵団という3つの選択肢がある。しかし憲兵団に入団できるのは、上位10名だけだ。
「後日、配属兵科を問う。
本日はこれにて第104期訓練兵団解散式を終える...以上!」
「「「ハッ!」」」
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みんな訓練兵団を卒業し、気分はお祭りのようで食事の場も賑わっていた。わたしもみんなに混ざり食事を楽しんでいた。
けれどそんな中、ジャンが内地は快適だと言った。その発言にエレンが立ち上がり、口を開く。
「ジャン...内地に行かなくても、お前の脳内は"快適"だと思うぞ?」
ジャンはあくまで冷静に、エレンを諭すように巨人の驚異について話す。巨人に奪われた領土を奪還すべく総攻撃をした兵士のほとんどが、巨人の胃袋に直行した、と。
そうだ。わたしがこうして特別指導員をやっていた間にも壁外任務は行われ、そこでもきっと多くの兵士が命を落としている。それは事実、なのだ。
「もう十分わかった。
人類は...巨人には勝てない...」
先程まで賑わっていたこの場も気が付けば静まり返り、ジャンはため息をついた。 けれど、エレンはそれで?と返す。
「巨人に物量戦を挑んで負けるのは当たり前だ。
4年前の敗因の1つは巨人に対しての無知だ...。負けはしたが得た情報は確実に次の希望に繋がる。
お前は戦術の発達を放棄してまで大人しく巨人の飯になりたいのか?
...冗談だろ?
俺は...俺には夢がある。
巨人を駆逐して、この狭い壁内の世界を出たら...外の世界を、探検するんだ」
その目は輝いていて、希望に燃えていた。あぁ、エレンは外の世界を見ているんだ、そう感じた。
けれどそれはジャンに伝わることはなく、結局は殴り合いに発展してしまった。火蓋が切られたかのように、再びみんなが騒ぎ出す。
そしてお互いが殴り合う瞬間、エレンはミカサに担がれた。一方でわたしは殴るために振りかぶったジャンの腕を掴んだ。
ミカサに担がれたエレンは一気に笑いものになる。けれどこちらとしては笑えなくて。
「...ジャン、いい加減にしないとダメだよ。
教官が来るかもしれないし」
「ナマエさんっ...!ちょ、力半端ねぇ!」
「ジャンもエレンもすぐ殴り合いに発展するのは本当によくない!
別にわたしは誰がどこに配属するかはみんなの自由だと思うけれど...調査兵団はそんな悪いところじゃないよ?」
掴んでいたジャンの腕をゆっくり離す。ジャンは少し気まずそうに目を彷徨わせてから、そうですか、と呟いた。
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そんなことがあった後日。トロスト区でみんなは壁上の固定砲を整備し、わたしはその様子を手伝いながら見ていた。みんなの配属兵科が決まればわたしも晴れて調査兵団に戻ることが出来る。
結局、忙しさのあまり調査兵団本部に戻ることは出来いままに3年が経ってしまった。みんな、変わりないかな。早く会いたいなあ、そんなことを考えていると自然に笑みが零れる。
その時だった。
ものすごい熱風が辺りを襲った。
「っ!?」
風圧に飛ばされそうになり、急いで立体機動に移り体制を整える。
エレンたちとは少し離れた場所にいたが、遠目から確認するとどうにか無事のようだった。
ほっと息を吐いた瞬間、爆発音のような耳を塞ぎたくなる音が響き渡る。
「.....これが、超大型巨人...」
トロスト区壁門に穴が空いた瞬間だった。