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「本日は立体機動装置と巨人討伐の訓練を行う!
まずはナマエ副兵士長による手本を見てもらう!」
待ちに待った立体機動装置の訓練だ。訓練を重ねる度、自分が調査兵団への1歩を着実に進めていることに喜びを感じると共に気を引き締めなければならないな、とも思う。
キース教官の言葉で、立体機動装置を身に付けたナマエさんが訓練兵の前に出る。
「教官が仰ったように、今からわたしが立体機動装置を使いながら巨人のうなじを削ぐ一連の流れを見せるよ。
人それぞれ動き方はあると思うから、あくまでもわたしのは参考程度に見ていてね!
ちなみに巨人の代わりに模型を使います」
そこには高さ4〜5m程の巨人の形を模した板がある。4〜5mといえど、小さなナマエさんからすれば倍以上の大きさだ。
それにしても、立体機動装置は上手く使えてもうなじを削ぐ程の力がナマエさんにあるようには見えない。言ってしまえば小柄な訓練兵の中でも群を抜いて細いのだ。そんな懐疑心とでもいうような気持ちを抱きながらナマエさんが動くのを待つ。
「座学で立体機動装置の仕組みは習ったと思うけれど、百聞は一見にしかず!ということで、今からさっそくやってみるね。
このアンカーを目標物に刺して移動したりするよ」
じゃあ、やるよー!という声とともにナマエさんはアンカーを巨人の模型に刺す。
その瞬間、ナマエさんの体はふわりと浮き巨人の背丈よりも高くに上がる。アンカーを抜き、そしてうなじのあたりにまたアンカーを刺す。うなじの真上に来たナマエさんは物凄い速さで回転を掛けながら一気に巨人のうなじを削ぎ落とした。
削がれた後を見ると、うなじはとても深く抉れていた。
「...っす、すげぇ!!」
「すごいです、ナマエさん!」
「あれが副兵士長の実力...」
誰もが口々にナマエさんへ称賛の言葉を向けていた。それもそうだ。自分たちじゃ到底出来ないような動きをやってみせたのだから。しかも、普段の雰囲気からはこんな動きが出来るなんて考えられないような人物から。
...俺も、あんな風に動けるだろうか。
「ふぅー。こんな感じかなあ...?
スピードをつけたいと思ってガスを蒸かしすぎたり、深く抉ろうとしてブレードをダメにしないように気をつけてね!」
「「「はい!!」」」
ナマエさんの動きに感化されたのか、皆がやる気に満ちた目をしていた。
しかし事は思った通りに進む訳ではなく、ナマエさんのような動きには到底程遠い動きしかできない。
「.....っなんでだ?」
「エレン、わたしの動き、真似しようとしてる?」
地面に降り、愚痴をこぼす俺を見つけたのかナマエさんが声を掛けてくる。
「...はい。
でも、俺にはナマエさんみたいに素早い回転とか掛けながら動けないんです」
真面目にそう言ったはずなのにナマエさんは吹き出した。
「ふはっ!エレンはエレンだよ?
わたしはこの背丈とかを生かしたからこそ、あの動きだけどエレンはわたしよりずっと大きいし体重だってあるんだからそれを生かした動きをしなくちゃ。
エレンなら.....もっと機動力よりも力がありそうだし、対象を深く抉ることを考えた方がいい気がするよ」
「...なるほど。
ナマエさん、ありがとうございます!」
頭を下げて挨拶をするとナマエさんは焦ったように両手を胸の前で左右に振りながら、た、大したこと言ってないから!と言った。
その後もナマエさんは立体機動に移ってからの動きで悩んでいた訓練兵に的確にアドバイスをしていた。
実力者だからこそ、周りをよく見ているんだろう。いつまでもぼうっとしている訳にもいかないので、俺も訓練に戻った。